
三国志の物語には、後世に残る数多くの教訓が詰まっています。「読書百遍(どくしょひゃっぺん)」もその一つ。
もとは魏の儒学者・董遇が説いた教えに由来しますが、その精神を体現した呉の武将・呂蒙の成長物語と重ねて語られることが多くあります。
今回は、「読書百遍」という四字熟語の意味と由来、そして現代にも通じる活用方法を紹介します。
読書百遍の意味とは
「読書百遍(どくしょひゃっぺん)」とは、同じ書物を繰り返し読むことで、その内容が自然と身につき、深く理解できるようになることを意味します。
一度読んだだけでは見えなかった本質を、何度も読むうちに掴めるようになる──そんな学びのあり方を示した四字熟語です。
読書百遍の使い方と例
「読書百遍」は、学問や専門分野の習得において、繰り返し学び続ける重要性を強調する場面で使われます。また、根気よく努力する姿勢を称える文脈でも用いられます。
- 彼は読書百遍を実践し、難解な法律書を理解した。
- 古典を読書百遍したことで、彼女は文章の深みを掴んだ。
- 読書百遍のおかげで、彼は会議で堂々と発言できるようになった。
読書百遍の語源・由来

「読書百遍」という言葉は、『三国志』魏書・王粛伝に付された裴松之注(はいしょうしちゅう)に記録されています。そこでは、魏の儒学者・董遇(とうぐう)が弟子たちに対して
「読書百遍、自然に解す(どくしょひゃっぺん、じねんにげす)」
と説き、書物を何度も繰り返し読むことで自然と理解できるようになることを教えたとされています。
また、この「繰り返し学び、成長する」という精神を体現した人物として、呉の名将・呂蒙(りょもう)がよく引き合いに出されます。
呂蒙は若い頃、同僚の蒋欽(しょうきん)と並んで武勇には優れていましたが学問には疎く、君主・孫権(そんけん)から勉学を勧められました。これを素直に受け止めた呂蒙は、昼夜を問わず努力を重ね、たゆまぬ学びを実践しました。
その成果は目覚ましく、後に呉の重臣・魯粛(ろしゅく)も、呂蒙の成長に驚き、「もはや昔の阿蒙(あもう)ではない」と称賛しました。「阿蒙」とは、呂蒙の諱(いみな)である「蒙」に、親しみを込めた呼びかけ「阿(あ)」を加えたもので、かつて無学だった頃の呂蒙に対する親愛の呼称です。
この逸話は後に「呉下阿蒙(ごかのあもう)」「括目相待(かつもくそうたい)」といった成語にもつながっています。
読書百遍の類義語・対義語
類義語
| 語句 | 意味 |
|---|---|
| 温故知新(おんこちしん) | 過去を学び直して新たな知識を得ること |
| 刻苦勉励(こっくべんれい) | 苦労をいとわず励むこと |
対義語
| 語句 | 意味 |
|---|---|
| 付け焼き刃(つけやきば) | その場しのぎの浅い知識や技術 |
| 浅学菲才(せんがくひさい) | 学識が浅く才能も乏しいこと |
読書百遍の英語表記
| 英語表記 | 意味 |
|---|---|
| Repeated Reading | 同じ本を何度も読むことで理解を深めること |
読書百遍のまとめ | ~繰り返し学び続ける大切さ~
「読書百遍」は、たゆまぬ努力が確かな成長を生むことを教えてくれる四字熟語です。呂蒙の姿に学び、私たちも繰り返し学び続ける大切さを改めて胸に刻みたいものです。
なお、呂蒙の成長にまつわる故事成語についても、さらに詳しくご紹介しています。あわせてご覧ください。
呉下阿蒙|無学だった呂蒙が努力によって見違える成長を遂げた故事に由来する四字熟語です。- 括目相待|努力を重ねた者を目を見張って再評価すべきだとする教えに基づく成語です。
- 昼夜兼行|呂蒙が昼夜を問わず軍を進め、迅速な戦術で成果を挙げた行軍の語
呉の武将に関連する四字熟語
このブログでは、呉の名将である呂蒙について紹介してきました。ここでは、呉の武将や呉にまつわる四字熟語をまとめています。
苦肉之計|周瑜と黄蓋が仕掛けた奇策。自らを犠牲にして敵を欺いた戦略- 車載斗量|諸葛亮が呉の皇帝・孫権に対して、江東の地は「人材が豊富で、車に載せ斗で量れるほど多い」と称賛した言葉で、呉の実力を象徴
- 落筆点蠅|呉の宮廷画家・曹不興が機転を利かせて筆の汚れを絵に変えた逸話
開門揖盗|張昭が孫権に忠告した故事にちなみ、油断の危険を戒めた語- 攀竜附驥|張昭が賢君孫権に仕える姿から、優れた人物に従うことの意義を説いた語
- 百挙百捷|呉の知将・周魴が敵将を謀略で翻弄し、百戦百勝の活躍を見せた故事
- 藍田生玉|孫権が諸葛恪の才能を称えた語で、優秀な後継を生む家系のたとえ
三者鼎立|呉の重臣・陸凱が過去の三国均衡を理想とし、戦略的に提言した故事成語
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