破竹之勢|杜預が南征で示した止めがたい攻勢の比喩

おもしろ四字熟語
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「破竹之勢」は、まさに敵を寄せつけぬ猛攻を表す言葉です。

もともとは中国・晋の武将である杜預(とよ)の軍事行動を讃えた言葉に由来し、現代でも「勢いが止められない状態」を象徴する表現として、政治、経済、スポーツなどさまざまな場面で使われます。

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破竹之勢の意味

破竹之勢(はちくのいきおい)とは、止めることができないほどの猛烈な勢いを指す四字熟語です。

「破竹」とは竹を割ることで、竹は最初の節を割るのが難しいが、ひとたび割れ目ができると、あとは節に沿って次々と容易に割れていくことから、連戦連勝のような圧倒的な展開に喩えられます。

破竹之勢の使い方と例

「破竹之勢」は、勢いがついて誰も止められない状況や快進撃を称賛する文脈で使います。多くはポジティブな評価を伴い、軍事的成功やビジネス、スポーツなどに応用されます。

  • 新進気鋭のベンチャー企業が破竹之勢で業界を席巻している。
  • W杯での日本代表の快進撃は、まさに破竹之勢であった。
  • 杜預軍の進撃は破竹之勢、敵軍は成すすべなく撤退した。

語源・由来|杜預の人物像と「破竹之勢」が生まれた軍議の場面

杜預(とよ)は、中国西晋の政治家・軍人で、魏晋革命を支えた重臣の一人です。儒学に通じた知識人でありながら、軍事にも卓越した才能を持ち、文武両道の名将として知られています。

杜預が活躍したのは、三国時代末期から西晋建国の混乱期。司馬氏によって魏が簒奪され、新たに西晋が成立したのち、最後の残存国家・を討つべく晋軍が南征を開始します(西暦279年)。

しかし、進軍を目前にして軍議の場では慎重論が台頭しました。夏は南方特有の疫病が広がる季節であり、兵を出すのは秋以降にすべきという意見が多く出たのです。

このとき、杜預は歴史上の名将・楽毅(がくき)を引き合いに出し、現在の晋軍の士気の高さを評価した上で、次のような比喩をもって進軍継続を訴えました。

原文(『晋書』杜預伝):
預曰:「今兵威已振 譬如破竹 數節之後 皆迎刃而解」

書き下し文:
預曰く、「今、兵威はすでに振ふ。譬えば破竹のごとく、数節の後は、皆、刃を迎へて解くなり。」

訳文:
杜預は言った。「今や我が軍の威勢は大いに振るっている。例えるなら竹を割るようなもの。最初の数節に刃を入れれば、あとは自然と裂けていくように、勝利を重ねていくであろう。」

ここでの「数節(すうせつ)」とは、竹の節であると同時に、暦の上での「節気」(15日単位)にもかけられており、「数節の後(=短期間)には決着がつく」とも読める巧妙な表現です。

杜預の言葉により進軍は続行され、晋軍は呉の守備を次々と突破。翌年、呉の皇帝・孫晧(そんこう)は晋に降伏し、ここにおよそ100年におよぶ三国時代は終焉を迎えました。

この軍議の中で杜預が用いた「譬如破竹(破竹の如し)」という比喩が後に定型化し、「破竹之勢」として「止められぬ勢い」を意味する故事成語となったのです。

魏の武将や文人たちにまつわるその他の四字熟語

「破竹之勢」と同様に、魏の武将や政治家、文人たちの言動から生まれた四字熟語には、多くの興味深い故事成語があります。以下はその一部です。

破竹之勢の類義語・対義語

類義語

語句 意味
騎虎之勢(きこのいきおい) 勢いがあり途中でやめることができない状態
旭日昇天(きょくじつしょうてん) 勢いが盛んで、どんどん進展・発展していくこと

対義語

語句 意味
意気消沈(いきしょうちん) 気持ちがすっかり落ち込み、元気を失うこと
気息奄奄(きそくえんえん) 息も絶え絶えで、今にも死にそうな状態

破竹之勢の英語表現と意味

英語表現 意味
unstoppable momentum 止めることのできない勢い
like a hot knife through butter 難なく突破する様子

破竹之勢の意味と由来を知り、現代の活用へ

「破竹之勢」は、単なる四字熟語にとどまらず、古代中国の知将・杜預が体現した軍事的勝利の象徴です。

その比喩の鋭さと強さは、現代においても説得力を持ちます。歴史を紐解きつつ、この言葉を的確に使えば、あなたの文章や話し言葉にも深みが加わることでしょう。

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