攀竜附驥|才ある者にすがり飛躍せよ

おもしろ四字熟語
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人が成功を収めるには、実力だけでなく「良い出会い」も重要です。

歴史には、自らの才覚だけではなく、時代の英雄にすがり、その後の人生を切り拓いた人物が数多く登場します。

今回取り上げる「攀竜附驥(はんりょうふき)」は、まさにそのような出世の型を象徴する四字熟語です。

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攀竜附驥の意味とは?

攀竜附驥(はんりょうふき)とは、すぐれた人物に付き従い、自分も成功・出世を果たすことのたとえです。

  • 「攀」はよじ登る、すがるという意味。
  • 「驥」は一日に千里を走る名馬のことで、非凡な才能を持つ人物を象徴します。

「竜につかまり、驥につき従う」という構成から、英雄に便乗して出世の機会を得るというニュアンスが込められています。

  • 「竜に攀(よ)じ驥(き)に附く」とも読みます。
  • 「攀竜」は「はんりゅう」とも読みます。

攀竜附驥の使い方と例文

この四字熟語は、自らの実力だけではなく、他者の力を借りて成功を得ることを説明する際に用いられます。特に歴史やビジネスの文脈で比喩的に使われることが多いです。

  • 若き士官は有能な将軍に取り立てられ、攀竜附驥の如く一気に昇進した。
  • 彼は創業者の右腕として攀竜附驥を果たし、いまや経営の中枢を担っている。
  • 時代の寵児にすがり攀竜附驥を狙う者も多いが、信頼を得るのは簡単ではない。

攀竜附驥の語源・由来|張昭が振り返る仕官人生の言葉

「攀竜附驥」という四字熟語は、『三国志』呉書・呉主伝(裴松之注)に記された、呉の重臣・張昭(ちょうしょう)の言葉に由来します。張昭は、孫策・孫権兄弟の側近として活躍した名士であり、若き孫権が政権を継いだのち、その内政・外交を支えた存在です。

彼は、自身が今日の地位を得たのは個人の才覚によるのではなく、優れた主君たちに仕えたおかげであるという趣旨で、以下のように述べました。

原文:
昭自謂攀龍附驥 致身於其間

書き下し文:
昭自ら謂(い)へらく、「龍に攀(よ)じ、驥に附きて、身を其の間に致す」と。

訳文:
「私(張昭)は竜にすがり、名馬に従って、ここまで身を立ててきたのだ。」

この「竜」や「驥(き)」が誰を指すかについて明記はされていませんが、多くの研究者は、「驥」は孫策、「竜」は後を継いだ孫権を象徴していると解釈します。つまり、張昭は非凡な二人の主君に仕えたことにより、自らも政治の中枢で活躍することができたと述べたのです。

ここでの「攀」はよじ登る・すがりつく、「附」は付き従うという意味であり、まさに自らの力だけでなく、時勢と主君に恵まれたからこその出世だったという謙虚な自省が込められています。

張昭は、自己の功績を誇ることなく、忠義と謙遜の姿勢を持って己の人生を語りました。これが後世、「攀竜附驥」という故事成語として独立し、「すぐれた人物に仕えることで自らも成功を得る」という意味を持つようになったのです。

現代でも、目上の人物や先輩に師事しながら成長の機会を得ることは多くあります。この言葉は、成功とは自力だけで成り立つものではなく、縁や協力を大切にする姿勢があってこそという教訓を、私たちに伝えてくれているのです。

張昭と孫権にまつわる関連記事

攀竜附驥は、呉の政治を支えた張昭と孫権の関係を象徴する語です。ここでは、呉を支えた魅力ある人物に関連する四字熟語を紹介します。

  • 開門揖盗|孫策の死後、政務を怠る孫権に張昭が放った忠言に由来。「門を開き盗を揖する」に見立てた警句
  • 車載斗量|諸葛亮が呉の皇帝・孫権に対して、江東の地は「人材が豊富で、車に載せ斗で量れるほど多い」と称賛した言葉
  • 苦肉之計|周瑜と黄蓋が仕掛けた奇策。自らを犠牲にして敵を欺いた戦略
  • 読書百遍|呂蒙が孫権の勧めで学問に励み、武勇だけでなく知略を身につけた逸話
  • 昼夜兼行|呂蒙が関羽を討つために、昼夜を問わず軍を進めたことに由来
  • 百挙百捷|呉の知将・周魴が敵将を謀略で翻弄し、百戦百勝の活躍を見せた故事
  • 落筆点蠅|呉の宮廷画家・曹不興が機転を利かせて筆の汚れを絵に変えた逸話
  • 三者鼎立|呉の重臣・陸凱が過去の三国均衡を理想とし、戦略的に提言した故事成語
  • 藍田生玉|孫権が諸葛瑾の息子・諸葛恪を称賛して語った逸話。「藍田に玉を生ず」は名門に優れた人物が生まれることのたとえ

攀竜附驥の類義語・対義語

類義語

語句 意味
攀竜附鳳(はんりょうふほう) すぐれた人物に頼って栄達を得ること

対義語

語句 意味
独立独歩(どくりつどっぽ) 他人に頼らず、独自に行動・成功を収めること
唯我独尊(ゆいがどくそん) 他を顧みず、自分こそが最も尊い存在だとする姿勢

攀竜附驥の英語表現とその意味

英語表記 意味
Ride the dragon and follow the steed 竜に乗り、名馬に従うことで、優れた人物に頼って出世・成功することのたとえ
Advance under the wings of giants 偉大な人物の庇護のもとで成長・成功するという意味の比喩的表現

歴史に学ぶ出世の知恵「攀竜附驥」の教え

攀竜附驥は単なる出世術を表すだけでなく、謙虚さと時代を読む力の重要性をも教えてくれます。歴史に名を残した張昭が、自らの立身出世を「竜と驥に攀じてここに至る」と振り返ったように、人の上に立つ者ほど、過去に支えられたことを忘れず、次代へと継承していくべきでしょう。

現代を生きる私たちも、才能ある人との縁を大切にし、その中で何を学び、どう成長するかを問われているのです。

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