衣繡夜行|栄華を誇っても誰にも知られぬ虚しさ

おもしろ四字熟語
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どれほど立身出世を遂げても、それが誰の目にも触れず、名を残さなければ虚しいものです。楚漢戦争という動乱の中で語られたこの言葉には、功名や栄誉の本質を問いかける深い示唆が込められています。

今回は「衣繡夜行(いしゅうやこう)」という四字熟語について、その意味と背景をたどりながら読み解いていきましょう。

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衣繡夜行の意味とは?

「衣繡夜行(いしゅうやこう)」とは、功名を上げ、また出世しても、故郷に錦を飾らなければ誰もそれを知らず、意味がないことのたとえです。

暗い夜に、豪華な刺繍の施された衣を着て歩いても、それを見てくれる人はいないという情景に由来しています。

  • 「繡(しゅう)」は、美しく縫い取りされた衣服のことを意味します。
「繡(しゅう)を衣(き)て夜行く」とも読みます。

衣繡夜行の使い方と例文

この四字熟語は、自己満足に終わる栄華や、誰にも認められない成功のむなしさを表す際に用いられます。また、「人知れず成功しても、功を成した意味が薄れる」という文脈で、戒めの意味としても使用されます。

  • 海外で成功を収めたが、地元の誰もそれを知らず、まさに衣繡夜行だった。
  • 彼の研究成果は誰にも知られず、衣繡夜行のような存在となっていた。
  • 目立たず地味な仕事でも、評価されなければ衣繡夜行に終わるかもしれない。

「衣繡夜行」の語源と由来|『史記』項羽本紀より

「衣繡夜行」は、『史記』の「項羽本紀」に記された項羽の言葉に由来します。

秦を滅ぼした後、項羽は都・咸陽の荒廃した姿を目にし、郷里である楚への帰還を望むようになります。その時、彼が口にしたのがこの言葉でした。

原文:
項王見秦宮室皆以燒殘破 曰:
「富貴不歸故郷 如衣繡夜行 誰知之者」

書き下し文:
項王、秦の宮室の皆焼かれ残り破れたるを見て、曰く、
「富貴にして故郷に帰らざるは、繡を衣て夜に行くがごとし。誰かこれを知る者あらんや」と。

訳文:
項羽は秦の宮殿が焼け落ち、荒廃しているのを見てこう言いました。
「富貴を得ても故郷に帰らないのは、刺繍を施した美しい衣を着て夜道を歩くようなものだ。それでは誰にも気づかれないではないか」と。

この言葉には、「どれほど成功しても、それを知ってもらえる場所で示さなければ意味がない」という価値観が示されています。

楚への凱旋にこそ栄誉があると考えた項羽の心情が表れており、彼の故郷や面子を重んじる文化的背景も垣間見える重要な場面です。

楚漢戦争に関するその他の四字熟語

「衣繡夜行」は楚の覇王・項羽の言葉に由来する故事成語です。以下の四字熟語も同時代の人物や戦いに基づいており、項羽や劉邦の生き様をより深く知る手がかりとなります。

衣繡夜行の類義語・対義語

類義語

語句 意味
衣錦夜行(いきんやこう) 功績を上げても誰にも知られず、意味がないことのたとえ
夜行被繡(やこうひしゅう) 暗闇で刺繍の服を着ても無意味である意。自己満足を皮肉る表現

対義語

語句 意味
衣錦還郷(いきんかんきょう) 成功・栄誉を得て故郷に凱旋すること

衣繡夜行の英語表現

英語表記 意味
Wearing brocade at night 成功しても誰にも気づかれないこと。無意味な栄耀栄華。

誰にも知られぬ成功の虚しさを戒める「衣繡夜行」

「衣繡夜行」は、栄光を得たとしても、それが他者に認められなければ虚しいという教訓を含む言葉です。楚漢戦争の英雄たちの栄光と凋落、その中で語られたこの故事は、現代においても、自己満足に終始することの危うさや、社会的評価の重みを考えさせてくれます。

目立たぬ成功に甘んじるのではなく、真に意味ある功績を成し、然るべき場で評価される努力を忘れないこと。それが、現代を生きる私たちにも通じる「衣繡夜行」の教えです。

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