百挙百捷|呉の智将・周魴の策略が生んだ連戦連勝の語源

おもしろ四字熟語
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「百挙百捷(ひゃっきょひゃくしょう)」という四字熟語をご存じでしょうか。あらゆる行動が全て成功するという、まさに理想的な結果を表す言葉で、ビジネスや受験、戦略など、さまざまな場面で使える力強い表現です。

本記事では、この語句の意味や使い方だけでなく、その語源となった『三国志』の故事を通じて、背景にある歴史や人物像にも迫ります。

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百挙百捷の意味

百挙百捷(ひゃっきょひゃくしょう)とは、あらゆる行動が、必ず成功することを意味します。

  • 「百挙」とは数多くの行動・策を指し、
  • 「捷」は「勝つ」「成功する」の意。

つまり、どんな手を打っても悉く勝つ、まさに連戦連勝を表す熟語です。

百挙百捷の使い方と例文

この語は、作戦や施策が連続して成功した状況、あるいは過去の実績が常に成果を上げてきたことを称賛する場面で使われます。

  • 彼のマーケティング戦略はまさに百挙百捷で、売上が右肩上がりだ。
  • 百挙百捷を誇る名将のごとく、彼はプロジェクトごとに結果を出してきた。
  • チームの団結と準備の成果が出て、今回の大会も百挙百捷だった。

百挙百捷の語源・由来|七通の偽手紙と石亭の大勝

「百挙百捷」という四字熟語は、『三国志』の「呉書・周魴伝」に語そのものは直接記載されていませんが、呉の将・周魴(しゅうほう)魏将・曹休を見事に欺き、石亭の戦いで大勝を収めた策略に由来する語と考えられています。

呉の孫権は、魏との戦に際し、周魴に対して「魏に偽って降伏し、敵を欺く策を実行せよ」と命じました。これに応じた周魴は、寿春に赴き、魏の将軍・曹休に対して呉を裏切ったように振る舞います。
このとき周魴は、自らが魏のために呉の軍機を探り、密かに報告している“内通者”であるかのように装うため、あえて呉の孫権宛に七通もの手紙を送りました。

これは一見、敵(呉)に手紙を送っているため怪しまれそうな行動ですが、曹休から見れば「これは周魴が呉の内部情報を魏に流す密使として活動している証拠」だと映ります。手紙の存在自体が、偽装工作の一部として巧みに演出されていたのです。

原文:
權召魴謂曰:「卿今為朕詐降於魏 必得以為功 若其不濟 朕不以罪卿也」
魴至壽春 詐為降者
說曹休曰:「吳人咸怨 願得中國之主」
乃為書七通以遺權

書き下し文:
権、魴を召してひて曰はく、「卿、今、朕のために魏にいつわりてこうせよ。必ずや功を得ん。らずとも、朕は卿をつみせず」と。
魴、寿春じゅしゅんに至りて、こういつわる者とり、
曹休に説きて曰はく、「呉人皆怨み、中国の主を得んと願ふ」と。
すなわち書を七通して以て権におくる。

訳文:
孫権は周魴を呼び、「そなたが私のために魏に偽って降伏すれば、大きな功績となる。もし失敗しても責めはしない」と語った。
周魴は寿春に赴き、降伏者を装い、
曹休に対して「呉の人々は皆不満を抱いており、魏の君主を望んでいる」と語った。
そして、呉の孫権宛に、七通もの手紙を送った。

この「七通の手紙」を見た曹休は、周魴が呉軍の動きを探りつつ魏に忠誠を尽くしていると信じ込み、警戒を解いて軍を進めました。ここに呉軍の挟撃作戦が始動します。

原文:
休果出兵 與魴偕進
權使朱然 陸遜等逆擊 大破之

書き下し文:
休、はたして兵を出し、魴とともに進む。
権、朱然・陸遜らをして逆にたしめ、大いにこれを破る。

訳文:
曹休はついに軍を出し、周魴と共に進軍した。
孫権は朱然・陸遜らに命じてこれを迎撃させ、魏軍を大いに打ち破った。

周魴の緻密な謀略はすべて功を奏し、呉は魏軍に対して大勝利を収めます。これをもって「百の策がすべて成功する」という「百挙百捷」という言葉が後世に残ったとされています。

なお、『三国志演義』では、周魴の偽降の演出をさらに劇的に描いており、詰問の使者が訪れたり、役所の前で断髪・謝罪する場面が登場します。さらに、横山光輝の漫画『三国志』でも周魴が自ら髪を切って忠誠を示す印象的な場面が描かれています。

これらの描写は物語としての脚色ですが、三国志ファンの記憶に残る名シーンとして、「百挙百捷」という語の重みを象徴する要素となっているといえるでしょう。

呉の武将に関連する四字熟語

このブログでは、呉の智将である周魴を紹介してきました。呉にはほかにも優秀な武将や智将が存在します。ここではそれらの人物にまつわる四字熟語を紹介します。

  • 開門揖盗|張昭が孫権に忠告した故事にちなみ、油断の危険を戒めた語
  • 攀竜附驥|張昭が賢君孫権に仕える姿から、優れた人物に従うことの意義を説いた語
  • 苦肉之計|周瑜と黄蓋が仕掛けた奇策。自らを犠牲にして敵を欺いた戦略
  • 呉下阿蒙|呂蒙が大きく成長し、魯粛に「もはや呉下の阿蒙ではない」と称賛された故事
  • 昼夜兼行|呂蒙が関羽を討つために、昼夜を問わず軍を進めたことに由来
  • 読書百遍|呂蒙が学問に励み、知略に優れた将に成長した逸話に基づく語
  • 括目相待|呂蒙の成長に驚いた魯粛に対して、呂蒙が「士は三日も会わなければ、目をこらして見直すべきだ」と語った故事に由来
  • 落筆点蠅|呉の宮廷画家・曹不興が機転を利かせて筆の汚れを絵に変えた逸話
  • 車載斗量|諸葛亮が呉の皇帝・孫権に対して、江東の地は「人材が豊富で、車に載せ斗で量れるほど多い」と称賛した言葉
  • 藍田生玉|孫権が諸葛恪の才能を称えた語で、優秀な後継を生む家系のたとえ
  • 三者鼎立|呉の重臣・陸凱が過去の三国均衡を理想とし、戦略的に提言した故事成語

百挙百捷の類義語・対義語

類義語

語句 意味
百戦百勝(ひゃくせんひゃくしょう) あらゆる戦いに勝利すること
百挙百全(ひゃっきょひゃくぜん) あらゆる策が全て完璧に成功すること

対義語

語句 意味
一事無成(いちじむせい) 何をやっても一つも成功しないこと
無為徒食(むいとしょく) 何の成果もなく、ただむなしく生きている状態

百挙百捷の英語表記と意味

英語表記 意味
every plan wins あらゆる計画が成功すること
hundred actions, hundred victories 百の行動がすべて勝利をもたらす

百挙百捷の由来と実践から学ぶ成功の戦略

百挙百捷は、単なる成功の積み重ねではなく、綿密な計略と協力体制が生んだ成果であり、歴史的な背景を知ることでその価値が一層際立ちます。

現代においても、周到な準備と確実な実行が成功を呼ぶことを教えてくれる、力強い故事成語といえるでしょう。

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