
三国志の時代、多くの英雄たちが生死をかけた戦いを繰り広げました。その中でも、関羽は勇猛さと冷静沈着さを兼ね備えた武将として知られています。
「言笑自若(げんしょうじじゃく)」は、そんな関羽の逸話に由来する四字熟語です。本記事では、言笑自若の意味や由来、実際の使い方について詳しく解説します。
言笑自若の意味
言笑自若(げんしょうじじゃく)とは、どのようなことがあっても平然としていることのたとえです。緊張する場面や困難な状況にあっても、落ち着いて普段通りの態度を崩さない様子を指します。
- 「言笑」は、言葉と笑い声、つまり談笑を意味します。
- 「自若」は、どんな状況でも慌てず落ち着いているさまを表します。
この二つの言葉が組み合わさり、談笑しながらも動じない落ち着いた態度を意味するようになりました。
言笑自若の使い方と例
「言笑自若」は、周囲が混乱していても自分を見失わず、平静を保っている人を称賛する場面で使われます。
例えば、
- 緊張感の高い会議でも、彼は言笑自若として発言を続けた。
- 試験本番、彼女は言笑自若の態度で堂々と問題に取り組んだ。
など、冷静さや落ち着きぶりを評価するときに用いられます。
常人離れの胆力──関羽が体現した「言笑自若」の精神
「言笑自若」は、どのような事態に直面しても動じず、平然と振る舞う様子を表す四字熟語です。その精神を最も鮮烈に体現した人物として語り継がれているのが、三国志の英雄・関羽です。
物語の舞台は、関羽が荊州を守りながら魏の曹仁と対峙した樊城(はんじょう)の戦い。漢水の増水を巧みに利用して敵を包囲し、于禁軍を降伏させ、龐徳を斬るという大勝利を収めた直後の出来事でした。
しかしその戦いの中で、関羽は毒矢を左腕に受け、毒が骨まで回るという重傷を負います。軍中の医者では手の施しようがなく、そこで名医・華佗(かだ)が招かれました。
華佗は「骨を削り毒を除かなければ薬は効かない」と説明し、外科手術を提案。関羽は即座にこれを了承します。
そして手術が始まると、関羽はなんと、酒を飲みながら肉を食べ、参軍・馬良と囲碁を打ちつつ、終始談笑していたのです。顔色一つ変えず、声も発さずに手術に耐え抜いたその姿こそが、「言笑自若」という言葉を象徴する伝説として後世に語り継がれています。
原文:
卻說關公臂中流矢 箭鏃有毒 臂腫而痛
軍中延醫調治 皆不能愈
有荊州名醫華佗 來視之曰:
「箭鏃雖去 毒已入骨 須刮骨去毒 方可合藥」關公許之
佗命刀斧砧鑱之具 使人伏膝而坐 執其臂而刮骨
關公飲酒食肉 與馬良圍棋 談笑自若
刮訖 令以藥敷之 臂不加痛書き下し文:
さて関公、流れ矢を臂(ひじ)に受け、矢じりに毒ありて、腫れて痛む。
軍中、医者を招きて治療せしも、皆治す能(あた)わず。
荊州の名医・華佗(かだ)来たりて診て曰く、
「矢じりは去れども、毒は既に骨に入る。骨を削りて毒を去り、しかる後に薬を用うべし」と。関公これを許す。
華佗、刀・斧・砧(きぬた)・鑱(のみ)の具を命じ、人に命じて膝をつかせて座せしめ、臂を執りて骨を刮(けず)る。
関公は酒を飲み肉を食し、馬良と囲碁を囲みて、談笑自若たり。
刮き終えて、薬を塗布せしに、臂の痛みさらに加わらず。訳文:
関羽は戦のさなか、毒のある流れ矢を腕に受け、腫れと激痛に苦しんでいた。
軍中の医者では治すことができず、名医・華佗が診察に訪れる。
華佗は「毒は骨に達しており、これを削り取らねば薬も効かない」と言い、関羽は治療を了承。
準備が整い、関羽の腕を押さえて骨を削る手術が始まった。
しかし関羽は動じることなく、酒を飲み、肉を食べ、馬良と囲碁を打ちながら談笑し、痛みを全く表に出さなかった。
手術後も痛がることはなかったという。
この場面は『三国志演義』第七十五回「關公刮骨療毒」に収録されており、関羽の胆力・精神力を示す伝説的な逸話として、後世に強烈な印象を残しました。
関羽とその義兄弟・劉備に関する四字熟語
ここでは、関羽と義兄弟の契りを結んだ劉備に関連する四字熟語を紹介します。
- 孤軍奮闘 – 関羽が味方のいない戦場で奮戦した姿
昼夜兼行 – 呂蒙が関羽を討つために、昼夜を問わず軍を進めたことに由来- 桃園結義 – 劉備・関羽・張飛が義兄弟の契りを交わした故事
- 冢中枯骨(けいちゅうのここつ)– 劉備が徐州の後継者に袁術を推すも、孔融が一笑に付した言葉
水魚之交 – 劉備と諸葛亮の切っても切れない親密な関係- 三顧之礼 – 劉備が諸葛亮を三度訪ねて誠意を示した逸話
- 髀肉之嘆(ひにくのたん) – 劉備が活躍の場を得られず嘆いた故事
言笑自若の類義語・対義語
類義語
| 四字熟語 | 意味 |
|---|---|
| 泰然自若(たいぜんじじゃく) | 落ち着いていて、少しも動じないこと |
| 沈着冷静(ちんちゃくれいせい) | 落ち着いていて冷静なこと |
対義語
| 四字熟語 | 意味 |
|---|---|
| 右往左往(うおうさおう) | あわてふためき、混乱して動き回ること |
| 周章狼狽(しゅうしょうろうばい) | 慌てふためいてうろたえること |
言笑自若の英語表記
| 英語表記 | 意味 |
|---|---|
| remain composed while talking and laughing | 話したり笑ったりしながらも平静を保つ |
| calm and unperturbed | 落ち着いていて動じない |
言笑自若のまとめ
「言笑自若」とは、どのような困難に直面しても、平然と落ち着いて振る舞うことを意味する四字熟語です。三国志の関羽が毒矢に傷つきながらも囲碁を打ちながら治療を受けた逸話は、その精神を象徴しています。
現代でも、緊張の場面や試練の中で冷静沈着に対応する姿勢は高く評価されます。関羽のような不動の心を持つことは、今を生きる私たちにも大いに参考になるでしょう。
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