
「性行淑均(せいこうしゅくきん)」という四字熟語は、三国志の名軍師・諸葛亮(孔明)が『前出師表』で用いたことで知られます。
性格と行動がともに穏やかで、偏りのない徳の持ち主を表現するこの言葉には、古典的な教養と人間観が凝縮されています。本記事では、その意味や語源、現代での使い方まで詳しく解説します。
性行淑均の意味
「性行淑均(せいこうしゅくきん)」とは、性(性質)と行(行動)が淑(しと)やかで、偏りがなく穏やかに整っていることを意味します。
内面の人格と外面のふるまいの両方において、調和のとれた品格ある人物を称える言葉です。
性行淑均の語源・由来 | 諸葛亮が重視する人材の在り方
諸葛亮が後主劉禅に北伐の決意を述べたこの上奏文は、単なる軍事方針の説明にとどまらず、忠臣としての覚悟や国家の人材の充実ぶりを強く訴えるものでした。
その中で諸葛亮は、朝廷の重臣たちの徳と才を称えて、以下のように述べています。
原文:
性行淑均 志高而識遠 雅量高致 才兼文武書き下し文:
性行(せいこう)は淑(しと)やかにして均(なら)しく、志は高くして識(し)ること遠く、雅量(がりょう)高致(こうち)、才は文武に兼(か)ぬ。訳文:
性格と行いは穏やかで偏りがなく、志は高く見識は広く、度量は大きく高尚であり、才能は文事にも武事にも通じている。
この言葉は、当時の実在する臣下たち(例えば李厳、蒋琬、費禕ら)を実名こそ挙げずとも、その人格と能力を称賛する文脈で述べられたものです。一方で、単なる賛辞にとどまらず、諸葛亮が重視する人材の在り方、すなわち「徳と才の調和が取れた理想像」も色濃く反映されています。
彼はこのような忠臣たちが朝廷を支えていることを強調することで、国政が安定していること、そして自らが北伐に赴く正当性と必要性を、後主劉禅に訴えようとしたのです。「性行淑均」は、そうした国家と君主への忠誠心から紡がれた、重みある表現だといえるでしょう。
性行淑均の使い方と例文
「性行淑均」は、品性が穏やかでバランスの取れた人物を称える際に用います。儒教的価値観に基づく語句であり、表彰文や推薦状、スピーチなどフォーマルな文脈でよく使われます。やや格式高い表現ですが、知性や人柄を評価する際には効果的な表現です。
- 彼はまさに性行淑均の士であり、組織の精神的支柱として活躍している。
- 性行淑均なる人材を得ることが、企業の長期的成長に不可欠である。
- その若者は性行淑均にして学問にも秀で、将来を嘱望されている。
諸葛亮に関連する四字熟語
諸葛亮は、三国志に登場する蜀の名軍師であり、知略と誠実さをもって国家の再興に尽力しました。彼にまつわる数々の逸話から、多くの四字熟語が生まれています。
- 水魚之交(すいぎょのまじわり):劉備と諸葛亮の切っても切れない深い信頼関係を表す
三顧之礼:劉備が諸葛亮を三度訪ね、礼を尽くして迎え入れた故事- 臥竜鳳雛(がりょうほうすう):世に知られぬ傑出した人物を指し、諸葛亮と?統を例えた言葉
- 七縦七擒(しちしょうしちきん):諸葛亮が南蛮王・孟獲を七度捕えて七度許した話に基づく
泣斬馬謖(きゅうざんばしょく):諸葛亮が愛弟子・馬謖を涙ながらに斬った非情な決断を伝える- 危急存亡(ききゅうそんぼう):諸葛亮が国家や組織の命運を左右する重大な局面を指して使った言葉
- 群疑満腹(ぐんぎまんぷく):諸葛亮が、信義をもって人を懐柔しなければ疑念が蔓延し、事が成し難くなると訴えた言葉
鞠躬尽瘁(きっきゅうじんすい):諸葛亮が、死ぬその時まで国家のために全力を尽くす決意を示した言葉- 竜驤虎視(りょうじょうこし):諸葛亮の壮志を示す語で、竜のように躍進し、虎のように睨みをきかせて天下を睥睨する様子を表す
- 車載斗量(しゃさいとりょう):諸葛亮が呉の皇帝・孫権に、江東には優れた人材が豊富であるとたたえた言葉
性行淑均の類義語・対義語
類義語
| 語句 | 意味 |
|---|---|
| 温良恭倹(おんりょうきょうけん) | 穏やかで、礼儀正しく、謙虚で質素な態度を持つこと |
| 温厚篤実(おんこうとくじつ) | 人柄が穏やかで、誠実で信頼のおけること |
対義語
| 語句 | 意味 |
|---|---|
| 傲岸不遜(ごうがんふそん) | 傲慢でへりくだる心がなく、他人を見下すような態度をとること |
| 我田引水(がでんいんすい) | 物事を自分に都合よく解釈し、自己の利益ばかりを図ること |
性行淑均の英語表記と意味
| 英語表記 | 意味 |
|---|---|
| Gentle and balanced character | 穏やかで調和の取れた性格・人格 |
諸葛亮の理想──性行淑均が示す人物像とは
「性行淑均」は、内面と外面の徳がともに整っている人物を表す、古典的かつ品格ある四字熟語です。三国志の名軍師・諸葛亮が『前出師表』に込めた理想の人間像が、この言葉に集約されています。
現代においても、人の品性や行いを重視する文脈で使える表現として、覚えておく価値のある熟語といえるでしょう。
原文:
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