「煮豆燃萁」|兄弟争いが生んだ悲しき詩──曹植の才と涙

おもしろ四字熟語
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兄弟であっても、時に争いは避けられない。特にそれが地位や権力に関わることであれば、その関係はより複雑になります。

三国志の英雄・曹操の子である曹植は、兄・曹丕との確執の中で一篇の詩を詠みました。その詩が語源となった四字熟語が「煮豆燃萁(しゃとうねんき)」です。

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煮豆燃萁とは?

「煮豆燃萁(しゃとうねんき)」とは、兄弟や身内同士が仲違いして争うこと、またはその悲しさを象徴する四字熟語です。

  • 「煮豆」は豆を煮ること、
  • 「燃萁」は豆殻を燃やすことを意味します。

豆と豆殻は同じ根から生まれた存在であり、それらが互いを傷つける構図に、血縁者が争う愚かさを重ねた表現です。

この言葉は、「同じ家に生まれた兄弟が争う様子」を比喩的に表し、身近な者との対立がもたらす無益さや悲哀を伝えるものです。

「豆を煮るに萁(まめがら)を燃く」とも読みます。

詩才あふれる曹植が詠んだ「七歩の詩」──煮豆燃萁の由来

「煮豆燃萁」は、三国時代の詩人・曹植(そうしょく)が詠んだ「七歩の詩」に由来する四字熟語です。

曹植は魏の創始者・曹操の息子で、並外れた詩才を持ち、父から特別に愛されていました。彼は兄・曹丕(そうひ)とともに後継者争いに関わる存在であり、曹操の死後、その政治的立場が揺らぐことになります。

最終的に帝位を継いだ曹丕は、かつて父からの寵愛を受け、多くの家臣からも支持を集めていた弟・曹植を潜在的な脅威とみなし、距離を置くようになります。

ある日、曹丕は曹植に対し、「七歩のあいだに詩を作らなければ罰を与える」と命じます。この過酷な命令に対し、曹植はその場で即興の詩を詠み上げました。

原文:
煮豆燃豆萁 豆在釜中泣
本是同根生 相煎何太急

書き下し文:
豆を煮るに豆萁まめがらを燃やし、豆は釜中に在りて泣く。
本これ同根より生ず、相い煎ることなんはなはだ急なる。

訳文:
豆を煮るのに豆殻を燃やし、豆は釜の中で泣いている。
どちらも同じ根から生まれたのに、なぜそんなに急いで煎り尽くそうとするのか。

この詩には、同じ家に生まれた兄弟が争うことの虚しさと皮肉が込められています。あまりに巧みで哀切に富んだこの詩に、曹丕も思わず感服し、処罰を取りやめたと伝えられています。

この逸話から、曹植はその非凡な詩才により「七歩之才」とも称されるようになりました。「煮豆燃萁」は、この詩の冒頭の一節から生まれた成語であり、兄弟・身内同士の争いの悲哀を象徴しています。

身内の対立に──「煮豆燃萁」の使い方例

「煮豆燃萁」は、兄弟や親族など身近な者同士の争いを指して使われます。家族経営の会社での対立、遺産を巡る親族争いなどに例えられることが多いです。

  • 兄弟で家業を巡って争う姿は、まさに煮豆燃萁といえるだろう。
  • 身内同士の対立が長引いている。煮豆燃萁のような悲劇は避けたい。
  • 相続をめぐって兄弟姉妹が骨肉の争いになるとは、煮豆燃萁とはこのことだ。

曹植とその父曹操に関する四字熟語

このブログで取り上げた曹植は、後世に語り継がれるほどの文才を持った天才詩人でした。また、その父である魏王・曹操は、智謀に優れた軍略家であり詩人としても知られています。

彼らに関連する四字熟語は、三国志の奥深い魅力を知るうえで絶好の入り口です。ここでは、彼らを中心とした物語や逸話に基づく成語をご紹介します。

煮豆燃萁の類義語・対義語

類義語

語句 意味
七歩之才(しちほのさい) 詩才に優れた人物(曹植の別称)
兄弟鬩牆(けいていげきしょう) 兄弟が争うこと

対義語

語句 意味
一致団結(いっちだんけつ) 心を一つにして力を合わせること
和衷協同(わようきょうどう) 心を同じくして協力すること

煮豆燃萁の英語表記と意味

英語表記 意味
Burning the beanstalk to boil the beans 身内同士が争う愚かさを表すたとえ

兄弟で争う悲劇を戒める──「煮豆燃萁」まとめ

「煮豆燃萁」は、三国志における曹植の詩から生まれた四字熟語で、血を分けた兄弟や同族が争い、無益な消耗や悲劇を生むさまを象徴しています。

日常生活では、家族・親族・社内などの近しい関係者同士の対立において、その虚しさや悲しさ、やりきれなさを表現する場面で用いられます。

「七歩之才」と併せて理解すると、言葉の裏にある切実な叫びや命がけの表現が見えてきます。
古代の詩文から、現代に通じる人間関係の普遍的なテーマを汲み取れる好例といえるでしょう。

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