一飯千金|わずかな恩義にも報いる漢の名将・韓信の故事

おもしろ四字熟語
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小さな親切や思いやりが、思いもよらない形で返ってくることがあります。そんなとき、ふと思い出したいのが「一飯千金(いっぱんせんきん)」という四字熟語。

漢の名将・韓信が語るこの言葉には、恩を忘れず、心を尽くして報いる姿勢が宿っています。現代にも通じるその精神を紐解いてみましょう。

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一飯千金の意味とは

「一飯千金(いっぱんせんきん)」とは、わずかな恵みに対しても十分すぎるほどの恩返しをすることを意味します。

もともとは、漢の名将・韓信が一杯の飯の恩に千金をもって報いたという故事に基づいています。釣り合わぬほどの厚意をもって返礼する姿勢を指します。

一飯千金の使い方と例文

「一飯千金」は、ささいな親切や恩義に対して、心からの感謝やそれを上回る形で返報する場面で使われます。義理堅い人物や、恩を忘れない人の行動を讃える際によく用いられます。

  • 彼の振る舞いはまさに一飯千金。昔助けられた恩を、会社設立という形で返したのだ。
  • 一度の相談に乗ってくれた恩を忘れず、一飯千金の礼を尽くした。
  • 戦国武将の多くが「一飯千金」の精神で、義理を重んじていた。

語源・由来|『史記』淮陰侯列伝に見る韓信の恩返し

「一飯千金」は、司馬遷『史記』「淮陰侯列伝」に記された韓信の逸話に由来します。

韓信が若き日、貧しく無名だった頃、食にも困り淮陰の町をさまよっていたときのことです。そのとき、洗濯を生業としていた年配の女性が彼を哀れみ、何度か飯を恵んでくれました。

『史記』では、この女性の名前は記されておらず、「漂母(ひょうぼ)」――つまり「洗濯女の老母」という意味の通称で記述されています。固有名ではありませんが、後世ではこの言葉が彼女を指す語として広く知られるようになりました。

後に韓信は劉邦に仕え、楚攻略など数々の軍功を挙げて、漢の大将軍となります。そして故郷・淮陰へ凱旋した折、かつて関わった3人の人物を探し出し、呼び出しました。

  • 漂母(洗濯女の老母)には、「かつての施しに感謝する」として、使いきれぬほどの大金を贈り、心から報いました。
  • 若き日に自分に屈辱を与え、股をくぐらせた若者には、「あのときお前を殺すのはたやすかった。だが、あの辱めを耐え忍んだからこそ今の私がある」と語り、彼に中尉(治安を預かる役職)の位を授けました。
  • 一時期自宅に韓信を住まわせていた亭長には、「恩を施すなら、最後まで面倒を見るべきだった」と叱り、わずか百銭だけを与えて去らせました。

この一連の行動は、韓信の「恩には報い、侮辱には寛容に、偽りの情には厳しく」という信念を象徴しています。そして、漂母に対する韓信の恩返しの行動が「一飯千金」の語源として語り継がれてきました。

原文(一部):
淮陰人有漂母者 見信饑 飯之 信後貴 厚報之

書き下し文:
淮陰の人に漂母(ひょうぼ)という者あり。信の飢うるを見て、これに飯す。信、のちに貴(たっと)くなり、これに厚く報ゆ。

現代語訳:
淮陰に、洗濯を生業とする年配の女性がいた。彼女は飢えていた韓信に何度か飯を与えた。のちに大将軍となった韓信は、その恩に報いて厚く礼を尽くした。

こうして「一飯千金」という四字熟語は、「わずかな恩にも惜しみない感謝と報恩を尽くす」という意味をもって、現代にも受け継がれているのです。

韓信に関するその他の故事成語

漢の名将・韓信に関する逸話から生まれた四字熟語は、智謀、忍耐、恩義、悲運など多彩な側面を映し出しています。以下に代表的な語句を紹介します。

「一飯千金」の類義語・対義語

類義語

語句 意味
一飯之徳(いっぱんのとく) わずかな施しの恩徳
一飯之恩(いっぱんのおん) 一杯の食事というささいな恩義
一飯之報(いっぱんのほう) わずかな恩義に恩返しをすること
恩讐分明(おんしゅうぶんめい) 恩と恨みを明確に区別すること

対義語

語句 意味
忘恩負義(ぼうおんふぎ) 受けた恩を忘れ、義理に背くこと
得魚忘筌(とくぎょぼうせん) 目的を達成すると手段や恩人を忘れること
鳥尽弓蔵(ちょうじんきゅうぞう) 目的達成後に功臣を排除すること

「一飯千金」の英語表記と意味

英語表記 意味
Repay a meal with a thousand gold coins 一度の施しにも十分すぎる恩返しをすること
Gratitude for a bowl of rice ささいな恩義を忘れずに感謝する気持ち

一飯千金に学ぶ恩返しの美徳と心のあり方

「一飯千金」は、ただの感謝ではなく、「報いる」という行動に重きを置いた言葉です。韓信という歴史上の人物が、無名時代に受けた一杯の飯の恩に、後年千金の恩返しをしたという事実は、時代を越えて多くの人に感動を与えてきました。

小さな恩に厚く報いる精神は、現代社会においても人間関係や信頼構築の原点とも言えるでしょう。私たちもまた、日常の中で「一飯千金」の心を持ち続けたいものです。

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