解衣推食|韓信が示した思いやりと人材登用の美談

おもしろ四字熟語
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仕事でも日常でも、人から受けた恩をどう返すかは難しい問題です。中国の歴史には、そんな恩に報いる美しい逸話が数多く残されています。

今回はそのひとつ、「解衣推食(かいいすいしょく)」という四字熟語を通して、思いやりと恩返しの精神に触れてみましょう。

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解衣推食の意味とは?

解衣推食(かいいすいしょく)とは、自分の衣を脱いで他人に与え、自分の食べ物を推して他人に食べさせるという意味から転じて、人に思いやりを持って慈しむこと。また、恩義に報いることを表す四字熟語です。
この言葉は

  • 「解衣(衣を脱ぐ)」と
  • 「推食(食を譲る)」

という二つの動作に分かれており、どちらも自らを犠牲にしてでも他人を思いやる姿勢が込められています。

「衣を解き、食を推(お)す」とも読みます。

解衣推食の使い方と例文

この四字熟語は、思いやりを持って他人に尽くしたり、過去に受けた恩義に対して誠意をもって応えたりする場面で使われます。とくに、目上の人や恩人への報恩として使われることが多いです。

  • 彼は若き日の恩人に再会し、解衣推食の思いで全力を尽くした。
  • 解衣推食の精神を持つリーダーが、人材を正しく登用する社会を築く。
  • 困っていた同僚に対し、彼はまさに解衣推食の態度で支援を申し出た。

語源・由来|『史記』淮陰侯列伝に見る韓信の忠義と恩返し

「解衣推食」は、中国前漢の正史『史記』淮陰侯列伝に記されている、韓信の忠義の言葉に由来します。

韓信はかつて項羽の陣営にいたものの、才能を認められず冷遇されたため、劉邦のもとに身を寄せました。劉邦は韓信を重用し、大将軍に任じて王にも封じました。やがて韓信が斉を平定すると、項羽は韓信に使者を送り寝返りを促しますが、韓信はその誘いを毅然と断ります。

その理由として、漢王・劉邦から受けた厚遇を述べたのが以下の一節です。

原文:
漢王之所厚我也 布衣之交尚不忘 解衣推食以相終始 今臣為大將 敢背之乎

書き下し文:
漢王の我を厚くするや、布衣の交わりすら尚(なお)忘れず、衣を解きて食を推して、もって終始を相(あい)なす。今、臣大将と為る。あえてこれを背かんや。

訳文:
漢王は私を非常に厚遇してくれた。身分の低かったころの交わりすら忘れず、衣を脱いで与え、食を分け与えて、最初から最後まで変わらぬ誠意で接してくれた。今や私は大将軍である。そのような恩にどうして背くことができようか。」

この言葉に見られるように、「解衣推食」は人を思いやり、礼を尽くすこと、そして受けた恩義に誠意をもって報いることを象徴する四字熟語として定着しました。

韓信に関するその他の故事成語

韓信は数々の戦術や人間関係の中で多くの故事成語を生みました。以下にその代表的な語句を紹介します。

解衣推食の類義語・対義語

類義語

語句 意味
博愛主義(はくあいしゅぎ) すべての人に対して分け隔てなく愛と慈しみをもって接する考え方
仁者無敵(じんしゃむてき) 仁徳を持つ者は敵をつくらず、万人に信頼されるということ

対義語

語句 意味
忘恩負義(ぼうおんふぎ) 受けた恩を忘れ、義理に背くこと
鳥尽弓蔵(ちょうじんきゅうぞう) 目的達成後に功労者を排除するたとえ
得魚忘筌(とくぎょぼうせん) 目的を果たしたあと、手段や恩人を忘れること

解衣推食の英語表記と意味

英語表記 意味
Offer clothes and food to others 他人に衣食を与えるほどの親切心を持つ
Repay kindness generously 受けた恩を惜しみなく返す

恩義に報いる心を今に伝える「解衣推食」

「解衣推食」は単なる親切心を超えた、人としての深い情と礼節、そして恩に報いる覚悟を教えてくれる故事成語です。韓信という歴史上の偉人が示したこの精神は、現代社会においてもなお輝きを失いません。

私たちも日常の中で、感謝や思いやりをもって人と接する心を忘れずにいたいものです。

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