雲合霧集とは?韓信に天下三分を説いた蒯通の名文に学ぶ群集の力

おもしろ四字熟語
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敵の勢いに対抗するために、多くの人々が一時的に結集する場面は、歴史上でも現代社会でもしばしば見られます。そんなときにぴったりの表現が「雲合霧集(うんごうむしゅう)」という四字熟語です。

今回はその意味や使い方、由来について詳しくご紹介します。

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雲合霧集の意味とは?

「雲合霧集(うんごうむしゅう)」とは、雲が集まり霧が立ちこめるように、多くの人々が一時的に集まってくることを意味する四字熟語です。
特定の目的のもとに人々が自然と結集するが、長続きするわけではなく、一過性の傾向を持つのが特徴です。語構成としては、

  • 「雲合」=雲が一つにまとまって集まること、
  • 「霧集」=霧が立ちこめながら一所に集まること、

いずれも「短時間かつ大量の自然現象」を連想させる語であり、ここから「勢いよく、多数が集まる」ニュアンスが導かれます。

雲合霧集の使い方と例文

「雲合霧集」は、共通の目的のために多数の人が集まるが、その関係性は脆弱で、目的が果たされた後には自然に解散してしまうような状況で使われます。

使用される状況

  • 社会運動のように一時的な熱気で群衆が集まる場面
  • 急な危機に対応するために形成された臨時の同盟
  • イベントやセールなど、一時的な関心で人が殺到する様子

例文:

  • 抗議デモには多くの人々が雲合霧集し、数時間後には誰もいなくなった。
  • 戦乱の中、各地の諸侯が雲合霧集して一時的な連合軍を結成した。
  • 年末のセール会場は雲合霧集した買い物客でごった返していた。

雲合霧集の語源・由来|蒯通が韓信に説いた「天下三分」の策略より

「雲合霧集」は、中国前漢の歴史書『史記』「淮陰侯列伝」に登場する言葉です。淮陰侯とは、漢の三傑の一人とされる名将・韓信(かんしん)を指します。

紀元前203年、韓信は斉を平定し、その功績により斉王に封じられました。当時、楚の覇王・項羽は韓信の勢力を警戒し、武将・武渉を使者として派遣して「劉邦と手を切れ」と持ちかけます。

しかし韓信は、劉邦からは破格の待遇で抜擢されたことに恩義を感じていた一方で、元々仕えていた項羽からは冷遇され、才能を発揮する機会すら与えられなかったという過去がありました(項羽の叔父・項梁の軍に属していたものの、無役無権のまま放置されていたとされます)。
こうした経緯から、韓信は即座に楚側の申し出を拒絶します。

その後、斉の士人・蒯通(かいとう)が韓信に天下三分の策を説きます。そこで用いられたのが「雲合霧集」の語でした。

「天下初發難 俊雄豪傑皆自王 號令一出 天下之士雲合霧集 魚鱗雜遝 熛至風起」
(天下に乱が起これば、英雄や豪傑たちは次々と王を称し、一声かければ、志ある者は雲や霧のように集まり、魚の鱗のように群れをなし、飛び火のように広がり、風のごとく勢いを得る。)

蒯通は、斉を支配する今の韓信には「天の時・地の利・人の和」がそろっており、楚と漢の両勢力が争い疲れたころに動けば、天下を掌握できると主張しました。
この中で使われた「雲合霧集」は、人心と軍勢が一挙に集中し、大勢力となる現象を、自然界の気象現象にたとえたものであり、決して偶発的な集まりではなく、「時代の要請による集中」である点が重要です。

韓信はこの進言を受け、大いに悩みますが、最終的には劉邦への忠義と恩義を選び、蒯通の策略を退けたと『史記』は伝えています。
こうした経緯を通じて、「雲合霧集」は単なる一時的な集まりではなく、「時流に乗じて一気に人材と勢力が集まり、情勢を動かすほどの力を持つ」ことを象徴する言葉として後世に残されました。

韓信に関するその他の故事成語

「雲合霧集」は、漢の名将・韓信の軍略と人望に由来する四字熟語です。韓信にまつわるその他の故事成語として、以下の語句もあわせてご覧ください。

雲合霧集の類義語・対義語

類義語

語句 意味
雲屯霧集(うんとんむしゅう) 多くの人や物が一か所に集まるさま

対義語

語句 意味
雲散霧消(うんさんむしょう) 集まっていたものがあとかたもなく消えること
雲消雨散(うんしょううさん) 人々が四方八方に散り去ること

雲合霧集の英語表記と意味

英語表記 意味
to assemble like clouds and mist 目的のために一時的に人が集まること
temporary congregation 一時的な集まり

雲合霧集の背景にある韓信の軍略と現代への教訓

「雲合霧集」は、単なる集まりではなく、その背景にある「脆さ」や「一過性」を強調する語句です。韓信の軍略に見るように、人の集まりは目的や状況に応じて柔軟でなければならず、真の団結とは異なるものです。

現代においても、プロジェクトチームや有事対応の連携などにおいて「雲合霧集」的な関係性が見られますが、その後の持続性や信頼構築が鍵になることを、この語は示唆しています。

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