
ニュース記事やSNSの投稿で、「今回の発言はネット上で論議を醸しています」という表現を見かけたことはありませんか?
一見すると自然に思えるかもしれませんが、実はこの表現、正しくは「物議を醸す」または「論議を呼ぶ」が正解です。「論議を醸す」は誤った使い方なのです。
本記事では、「物議を醸す」と「論議を呼ぶ」の正しい意味や違い、そして誤用が生まれる理由について詳しく解説します。
「物議を醸す」「論議を呼ぶ」の正しい意味と使い方
まず、それぞれの慣用句がどのような意味を持っているのかを確認しておきましょう。
物議を醸すの意味と使い方
- 「物議」とは、人々の間で交わされる様々な批判的・否定的な議論のこと。
- 「醸す(かもす)」は酒や味噌を熟成させる意味から転じて、ある状況や雰囲気、結果を「引き起こす」「生み出す」ことを意味します。
つまり、「物議を醸す」とは、批判や議論を引き起こすことを表します。
具体的な使用例
- 新商品の広告が不適切だとして、世間の物議を醸している。
- 政治家の発言が物議を醸し、メディアで大きく報道された。
- 芸能人のSNS投稿が物議を醸す結果となった。
論議を呼ぶの意味と使い方
- 「論議」は、ある物事について意見を述べ合うこと。こちらは中立的なニュアンスも含みます。
- 「呼ぶ」はそのまま、呼び起こすという意味です。
つまり「論議を呼ぶ」とは、何かをきっかけに議論が始まることを指します。
具体的な使用例
- 制度改革案が発表され、各方面で論議を呼んでいる。
- 教育方針の変更は、専門家の間で論議を呼んだ。
- その裁判判決は、法律家たちの間で論議を呼ぶ結果となった。
このように、
- 「物議を醸す」は否定的・批判的な反応を引き起こす場合に用いられ、
- 「論議を呼ぶ」は肯定・中立を含む広範な議論に使われる傾向があります。
語源の背景|「物議を醸す」と「論議を呼ぶ」はどう生まれた?
「物議を醸す」と「論議を呼ぶ」は、いずれも批判や議論を引き起こすことを意味する表現ですが、それぞれ成り立ちや使われ方には違いがあります。
物議を醸すの語源
「物議」は「物事に対して多くの人が意見や批判を交わすこと」を意味し、江戸時代の戯作や評論などにも見られる表現です。明治以降は新聞や雑誌などで頻繁に使われるようになり、特に否定的な反応を集めるような話題と結びつけられることが多くなりました。
「醸す」はもともと酒や味噌を発酵させてつくることを意味しており、そこから「雰囲気や感情などを生み出す」「ある状態を引き起こす」といった比喩的な使い方が生まれました。
「物議を醸す」という言い回しは、この「醸す」の比喩的用法をもとにして、批判的な議論を引き起こすという意味で定着したものです。
論議を呼ぶの語源
「論議」は「意見を述べ合って議論すること」を意味する言葉で、古くから学問や政治の場で使われてきました。現代では、社会問題や時事的なテーマに対する意見交換を指して広く用いられています。
「呼ぶ」は「呼び寄せる」「引き起こす」という意味で、「笑いを呼ぶ」「反響を呼ぶ」などの使い方があることから、「論議を呼ぶ」という形で自然と議論が巻き起こることを表す表現が生まれました。この表現は中立的なニュアンスで使われることが多く、肯定的な話題にも用いることができます。
なぜ「論議を醸す」と誤用されるのか?

「物議を醸す」がある程度格式ある表現であるため、ビジネスや公的文書で使おうとしても言い慣れていないと混乱が生じがちです。特に、以下のような背景から誤用が起きていると考えられます。
- 「醸す」=雰囲気を作るという感覚的理解があり、「論議」とも組み合わせやすく感じてしまう
- 「論議を呼ぶ」と「物議を醸す」が混ざってしまう
- 言葉の響きだけでなんとなく意味が通じてしまう
しかし、「論議を醸す」は誤った使い方ですので、「物議を醸す」や「論議を呼ぶ」など、正しい表現を使うようにしましょう。
まとめ|正しい慣用句で印象を正確に伝えよう
「物議を醸す」と「論議を呼ぶ」は、どちらも議論や反応を引き起こす意味合いを持ちますが、
- 「物議」はやや否定的・批判的、
- 「論議」は中立〜肯定的なニュアンスを含みます。
そして「論議を醸す」は誤用であることに注意が必要です。
日常会話やビジネス文書で使う際は、意味の違いと語の正確さを意識し、場面に応じた使い分けを心がけたいものですね。
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