
「昨日の会議、部長が私の成果をまるごと自分のものみたいに話しててさ……もう、腹が煮えくり返ったよ!」
——このような表現、どこかで聞いたことがありませんか?
しかし、その言い方、実はちょっと間違っているかもしれません。本来の正しい表現は「はらわたが煮えくり返る」なんです。
今回は、そんな怒りに満ちた場面でよく使われる慣用句「はらわたが煮えくり返る」について、意味や語源、そしてなぜ「腹が煮えくり返る」と誤用されるのかまで、詳しく解説していきます。
「はらわたが煮えくり返る」の意味と使い方|正しい使い方の例文も紹介
「はらわたが煮えくり返る」とは、怒りの感情が極限に達し、体の奥底から激しく煮えたぎるような状態になることを意味する慣用句です。
この「はらわた」は漢字で「腸」と書き、主に腹部の内臓を指します。
日本語では昔から、「腹」「腸」「はらわた」など体の内側を感情や本音が宿る場所としてたとえる表現が多く使われてきました。
たとえば、「腹を立てる」「腹に据えかねる」「腸が煮えくり返る」なども同じ系統の表現です。
つまり「はらわたが煮えくり返る」とは、怒りが深部から湧き上がり、まるで内臓が煮えたぎるような感覚をたとえた、非常に強烈な怒りの表現なのです。
- 理不尽なクレームに対して、はらわたが煮えくり返る思いだった。
- 彼の裏切りを知ったとき、はらわたが煮えくり返るほど怒りが湧いた。
- 自分の手柄を上司に横取りされたと知り、はらわたが煮えくり返った。
このように、「はらわたが煮えくり返る」は、激しい怒りや憤慨を表現する場面に適しています。
語源は「内側から煮えたぎる怒り」の感覚に由来
「はらわたが煮えくり返る」という表現は、怒りが体の奥深くから煮え立つように湧き上がるさまを比喩的に表した慣用句です。
「はらわた」は漢字で「腸」と書き、腹の中の内臓を指します。古くから日本語では「腹を立てる」「腹に据えかねる」などの表現に見られるように、腹部や内臓が感情や本音を象徴する部位として扱われてきました。
一方の「煮えくり返る」は、「ぐつぐつと激しく煮えたぎる」状態を表す言葉で、怒りや苛立ちが沸騰するような心理状態を描写するのに使われます。
この2つの言葉が組み合わさることで、抑えきれない怒りが体の深部から沸き上がるような情景を印象的に表現しています。
なお、「はらわたが煮えくり返る」という表現が文献上いつ頃から使われているかについては、明確な初出資料は確認されておらず、近代以降に一般化した可能性が高いと考えられます。
なぜ「腹が煮えくり返る」と誤用されるのか?

実際の会話やSNSでは、「腹が煮えくり返る」という表現もよく見かけます。ですが、これは文法的・意味的に少しズレた誤用です。
なぜ誤用されるのか、理由はいくつか考えられます:
- 「はらわた」という言葉の馴染みのなさ:現代人にとってはやや古風・グロテスクな語感があるため、より一般的な「腹」に置き換えてしまう傾向があります。
- 音声での類似性:会話の中で聞いたとき、「はらわた」と「腹」が曖昧に聞こえ、「腹」だけを拾って覚えてしまうケースがあります。
- 短縮による省略癖:「はらわたが煮えくり返る」はやや長いため、省略してしまう人が出てくることも。
しかしながら、「腹が煮えくり返る」と言ってしまうと、「腹=お腹の表面」が煮えるような違和感のある表現になってしまいます。あくまで内臓(感情の源)まで煮え立つことが、この表現の本質なのです。
まとめ|怒りの極みを表すなら「はらわたが煮えくり返る」が正解
「はらわたが煮えくり返る」は、怒りで感情が爆発しそうなほどの状態を的確に表す日本語の慣用句です。その語源は、内臓が煮えたぎるかのような感覚にあり、言葉の響きからも怒りの激しさが伝わってきます。
一方で、近年は「腹が煮えくり返る」といった誤用も見受けられますが、本来の意味や語源を踏まえると正しい表現とは言えません。
特にビジネス文書や公式な場面では、こうした慣用句の正しい使い方が求められますので、ぜひ覚えておきましょう。
感情を表す日本語は非常に豊かです。「はらわたが煮えくり返る」もその一つ。怒りを表現する際には、正しい表現で心の動きを伝えてみてください。
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