正鵠を射る・核心を突く(×正鵠を突く)──的を射た表現、外した誤用

誤用しやすい慣用句
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「彼の発言はまさに正鵠を突いていたね。」
──こういった言い回し、ビジネスの場でもよく耳にしませんか?

実はこれ、「正鵠を突く」ではなく、「正鵠を射る」が正しい表現。
つい「核心を突く」と混同してしまいがちですが、組み合わせを間違えると、「教養が浅い」と思われてしまうことも。

今回は、「正鵠を射る」「核心を突く」の正しい意味と語源、そして混同による誤用について、社会人として知っておきたいポイントをわかりやすく解説します。

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「正鵠を射る」「核心を突く」の意味と正しい使い方

どちらも「物事の本質を的確に言い当てる」という意味で使われる慣用句です。ただし、それぞれの語源に基づいた使い分けが必要です。

正鵠を射る(せいこくをいる)

意味:物事の核心を的確に突いていること。まさに的を得た発言や判断を指します。

正しい使い方

  • 社長のコメントは正鵠を射ており、議論の流れが一気に変わった。
  • 彼の分析は正鵠を射ていて、全員が納得した。
  • その広告コピーは消費者心理の正鵠を射ていると思う。

核心を突く(かくしんをつく)

意味:物事の最も重要な部分に言及すること。話の本質や問題の真因を直撃するような場面で使われます。

正しい使い方

  • 記者の質問は核心を突いていた
  • 彼女の指摘は核心を突いており、反論の余地がなかった。
  • 今回のプレゼンは、顧客ニーズの核心を突いた提案になっていた。

両者ともに似たシーンで使われますが、「射る」=弓矢などで的を射る「突く」=鋭くつつく・衝くという動詞の違いに注意しましょう。

「正鵠を射る」「核心を突く」の語源とは?

「正鵠を射る」の語源

「正鵠(せいこく)」とは古代中国で弓の的の中心を意味します。
この語が用いられた最古の例は、『礼記』射義篇の中の以下の一節です。

不失正鵠
(正鵠を失わず、つまり的の中心を外さない)

孔子はここで「音楽に合わせて矢を放ち、中心を外さない者こそ真に賢者である」と説いています。これは、心・身体の調和が真の集中力を生むという教えであり、やがて「正鵠を射る」は「物事の核心を正確に突き当てる」という意味で使われるようになったのです。

「核心を突く」の語源

「核心を突く」は、比較的近代に生まれた比喩表現です。

  • 「核心」は「物事の中心的・本質的な部分」、
  • 「突く」は「鋭く刺す・指摘する」ことを意味し、

組み合わせによって「本質を鋭く言い当てる」意味になります。

特定の古典出典はありませんが、議論や討論、ビジネスの会話で多用されるようになった現代的な表現です。「急所を突く」「問題の核心を突いた質問」などの使われ方をするのが一般的です。

なぜ「正鵠を突く」と誤用されるのか?

「正鵠を突く」という誤用が生まれる背景には、次のような理由が考えられます。

  • 「核心を突く」との混同:
    どちらも「的を得た発言」という意味で使われるため、動詞部分を入れ替えて混同してしまうケースが多い。
  • 「射る」の語感の薄さ:
    現代では「射る(いる)」という動詞があまり日常的でないため、「突く」のほうが自然に聞こえてしまう。
  • 音声での誤認:
    会話の中で「正鵠をいる」と言っても、早口やイントネーションの違いで「突く」に聞き間違えられやすい。

こうした理由から、「正鵠を突く」という誤用が少しずつ定着しそうになっていますが、公的な文章やビジネス文書では誤りとして扱われますので、注意が必要です。

まとめ|「射る」と「突く」の違いを理解しよう

「正鵠を射る」と「核心を突く」は、いずれも「物事の本質をつく」際に使われる慣用句ですが、前者は「射る」、後者は「突く」と、それぞれ異なる動詞を用いることがポイントです。

誤用されやすい「正鵠を突く」という表現は、正しくは「正鵠を射る」。ビジネスの場で使う際には、正確な語彙が信頼を生む鍵になります。

的を射るように、言葉も正確に。これが、伝わる日本語の第一歩です。

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