
「肝に据えかねる発言だったよね…」
会議後の同僚との雑談で、こんな言い回しを聞いたことはありませんか?
実はこの「肝に据えかねる」という表現、じつは誤用なんです。正しくは「腹に据えかねる」。
ビジネスの場でも感情を抑えきれないようなシーンでよく使われるこの慣用句、正しい意味や使い方、そしてよくある間違いについてしっかり押さえておきましょう。
腹に据えかねるの正しい意味と使い方
「腹に据えかねる」とは、怒りや不満をじっと我慢できない、心の中にとどめておけないという意味です。冷静にとどまろうとしても、感情の高まりによって抑えきれなくなるさまを表現しています。
この表現は、ビジネスや日常会話においても使われることが多く、「我慢の限界」「怒り爆発寸前」のニュアンスを含んでいます。
1.上司のパワハラに対して
2.理不尽なクレームに対して
3.長年の鬱憤が爆発
どれも、「感情が抑えきれない」「黙っていられない」といった、強い内面の感情を示す使い方です。
腹に据えかねるの語源とは
「腹に据えかねる」は、古くからある日本語表現で、感情の中心が「腹(はら)」にあるという日本語の感覚から生まれました。
「腹」という言葉は、古来より「心」や「気持ち」の所在として使われており、「腹を立てる」「腹黒い」「腹を決める」など、精神的な動きと密接に関わっています。
この「腹に据える」とは、本来、感情をぐっと心の中(=腹)に収めて我慢すること。「据えかねる」となることで、それができない、つまり感情が収まらない・抑えきれない状態を意味するようになりました。
なぜ「肝に据えかねる」と誤用されるのか?
「腹に据えかねる」の誤用として、「肝に据えかねる」がしばしば見られます。これは、おそらく以下のような理由が考えられます:
- 「肝に銘じる」「肝が据わる」などの表現と混同している:
肝は精神の強さや決意を表す部位としても使われるため、「感情と関わる臓器=肝」と連想されやすい - 「腹に据える」という表現が馴染みが薄くなってきている:
若い世代を中心に、「腹に据える」の感覚が希薄になり、よりインパクトのある「肝」に置き換えてしまう - 意味としても大きな違いを感じにくい:
「肝に据えかねる」と言っても、なんとなく通じてしまうため、そのまま使い続けられてしまう
しかし、「肝に据えかねる」は日本語として辞書に記載のない、いわゆる存在しない慣用句です。ビジネスメールや公式文書など、きちんとした場面では誤用と見なされ、評価を下げる可能性もあります。
まとめ|感情の限界を表すなら「腹に据えかねる」
「腹に据えかねる」は、怒りや不満を我慢できず、心の中で抑えられないという状態を的確に表す日本語の慣用句です。
よくある誤用「肝に据えかねる」とは異なり、正しい表現として辞書にも掲載されており、特にビジネスやフォーマルな場面で使う際には注意が必要です。
怒りをあらわにする前に「腹に据えかねた」と表現すれば、語彙の正確さと冷静さの両方を感じさせることができます。
ぜひこの機会に、「腹に据えかねる」という表現を正しく理解し、適切に使いこなしていきましょう。
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