引導を渡すの正しい使い方|誤用「印籠を渡す」は存在しません

誤用しやすい慣用句
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引導を渡すの意味と使い方

「このプロジェクトはこれ以上の利益が見込めないため、経営会議で印籠を渡すことが決まった」——この言い方は誤りです。

正しくは、「引導を渡すことが決まった」です。「引導を渡す」は終わりを告げる/最終判断を下すの意。一方の「印籠を渡す」誤用です。

本記事では、正しい意味・使い方・語源、そして誤用されやすい理由を具体例で解説します。

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【意味】「引導を渡す」の正しい理解と実例

引導を渡すとは、対象に最終的な決断を告げる・終止符を打つことを意味する表現です。多くの場合、感情や状況に区切りをつけ、もう後戻りできない「終わり」を明確にする場面で使われます。

ビジネスや政治などの公的なシーンでは、冷静で強い決断を下すニュアンスで用いられます。一方で、私的な関係や自分自身の決意に使うと、潔く一線を引く印象を与えます。

  • 「プロジェクトに引導を渡す」= 採算が取れず終了を正式に決定する
  • 「政権に引導を渡す」= 退陣を迫り、政権交代を決定づける
  • 「旧体制に引導を渡す」= 時代の変化を象徴する表現

具体例で理解する

  1. このプロジェクトはこれ以上の利益が見込めないため、経営会議で引導を渡すことが決まった。
  2. たび重なる裏切りに耐えかねて、私はその友人関係に引導を渡すことにした。
  3. 古い慣習に引導を渡し、新しい働き方に踏み出す時が来た。

いずれも「終わりを告げる」という共通点を持ちますが、そこには決意と冷静さが伴います。単なる別れや中止ではなく、「これで終わり」と明確に線を引く意志がこもった表現です。

【語源】仏教の「引導」から転じた比喩表現

引導の語源:仏教儀礼

「引導」は仏教に由来する言葉です。もともとは、僧侶が葬儀や法要の場で亡くなった人の魂を安らぎへ導くために唱える法語(引導法語)や、その儀式そのものを指します。

「導(みちびく)」という字が示す通り、迷いや執着から魂を解き放ち、悟りへと導くのが本来の意味です。つまり、「引導を渡す」とはもともと『死者に最後の道を示す』という厳粛な宗教行為でした。

やがてこの表現が転じ、現代では「人や物事に終止符を打つ」「これ以上は続けられないと判断する」といった比喩的な意味で用いられるようになりました。宗教的な背景を抜きにしても、『終わりを示す』『次の段階へ導く』という本質は変わっていません。

したがって、「引導を渡す」という言葉には単なる中止ではなく、“責任をもって終わらせる”という含意があるのです。

【誤用される理由】「印籠を渡す」は存在しない表現

印籠を渡すの誤用

印籠を渡す」という表現は日本語として存在しません。にもかかわらず使われてしまうのは、言葉の響きの近さとテレビ文化の影響によるものです。

  • 語感の混同:「引導(いんどう)」と「印籠(いんろう)」は音が似ており、耳で聞くと取り違えやすい。
  • 水戸黄門の印象:時代劇『水戸黄門』では、印籠を掲げる場面が“最終決定打”として定着し、「最後に権威で相手をねじ伏せる」構図が多くの人の記憶に残りました。

そのため、「最終的な判断を下す = 印籠を渡す」と誤って結びつけてしまうのです。実際には「印籠を渡す」も「印籠を見せる」も慣用句ではなく、完全な誤用です。

終了や宣告を表す正しい言い方は、あくまで「引導を渡す」のみ。場面によっては強い表現になるため、状況に応じて使い分けましょう。

【まとめ】「引導を渡す」を正しく使い、誤用を避けよう

「引導を渡す」は、仏教に由来する“最後の導き”を語源に持ち、現代では終止符・決断・けじめを意味する表現です。

似た響きの「印籠を渡す」は、ドラマの影響や語感の混同から生まれた誤用にすぎません。正しい表現を理解し、ビジネスや日常で自信を持って使えるようにしましょう。

正確な日本語を使うことは、信頼を生み、言葉に品格を添える第一歩です。

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