
遠慮近憂(えんりょきんゆう)は、中国春秋時代の思想家である孔子の言葉に由来する四字熟語です。出典は『論語』衛霊公第十五で、「遠い将来への備えがなければ、近いうちに心配事が生じる」という人生訓を示しています。
現代の「遠慮」という言葉は「控えめにする」という意味で使われますが、本来は「遠い将来まで見通して考えること」を意味していました。孔子は目先の利益や安心にとらわれず、長期的な視野を持つことの重要性を説いています。
遠慮近憂の意味|将来への備えがなければ近い将来に困る
遠慮近憂(えんりょきんゆう)とは、遠い将来のことまで十分に考え備えていなければ、必ず近いうちに心配事や問題が起こるという意味です。
「遠慮」は本来、遠い未来を見通して思慮することを指し、「近憂」は間近に迫った心配事や災難を意味します。
将来への準備や計画の大切さを戒める言葉として用いられ、経営、政治、教育、日常生活など幅広い場面で使われています。
遠慮近憂の使い方|孔子の教えを現代に活かす例文
長期的な視点を持つことの重要性を伝える際に用いられます。特に将来への備えや危機管理の必要性を説く場面で使われることが多い四字熟語です。
- 会社の成長戦略を考える上で、遠慮近憂の精神は欠かせない。
- 災害対策を怠れば、まさに遠慮近憂という事態になりかねない。
- 老後の資金計画を立てるのは、遠慮近憂の教えを実践することだ。
- 目先の利益だけを追う経営は、遠慮近憂を忘れた姿勢と言える。
なぜ孔子は未来への備えを説いたのか|遠慮近憂の語源と由来

遠慮近憂の出典は『論語』衛霊公第十五十一章です。『論語』は孔子と弟子たちの言行をまとめた儒家の根本経典であり、この言葉は孔子自身の教えとして記録されています。
孔子が生きた春秋時代は、周王朝の権威が衰え、諸侯が争いを繰り返していた激動の時代でした。政治や社会の秩序が揺らぐなかで、目先の利益に流される為政者も少なくありませんでした。
そのような状況の中で孔子は、国家運営でも個人の生き方でも、先を見据えた判断こそが重要であると説きました。その思想を象徴する言葉が「人無遠慮、必有近憂」です。
原文:
子曰「人無遠慮 必有近憂」書き下し文:
子曰く「人遠慮無ければ、必ず近憂有り。」訳文:
孔子は言った。「人は遠い将来について十分に考え備えることがなければ、必ず近いうちに心配事や困難が生じるものである。」
ここでいう「遠慮」は現在一般に使われる「気兼ねする」という意味ではありません。本来は「遠い未来まで考えを巡らせること」を意味します。
この一句は単なる処世訓ではなく、国家経営や人生設計にも通じる普遍的な教えです。将来への準備を怠れば問題は突然現れるのではなく、備えを欠いた結果として近いうちに表面化するという孔子の洞察が込められています。
現代社会でも、防災対策、資産形成、企業経営、人材育成など、長期的視点が求められる場面は数多くあります。遠慮近憂は二千年以上を経た現在でも色あせない教訓として受け継がれているのです。
孔子の教えをさらに知るための関連故事
『論語』には、孔子の思想や人生観を伝える数多くの故事が残されています。遠慮近憂とあわせて読むことで、孔子が重視した徳や学問、政治観をより深く理解できるでしょう。
円鑿方枘(えんさくほうぜい)|孔子や孟子の思想とも結び付けられる故事。丸い穴に四角い柄を入れようとしても合わないというたとえから、性質の異なるものが調和しないことを示し、現実を見極める大切さを教える- 按兵不動(あんぺいふどう)|晋の趙簡子が衛への出兵を考えた際、衛には蘧伯玉・孔子・子貢ら徳と知恵を備えた人物がいることから、攻めても得るものより失うものが大きいと判断し、出兵を見合わせた故事に由来。目先の戦果ではなく、戦後の混乱や道義的な不利までをも見通す言葉
韋編三絶(いへんさんぜつ)|孔子が『易経』を繰り返し読み、竹簡を綴る革紐が何度も切れたという逸話。未来を見通す知恵を求める学問への執念が伝わる- 一日之長(いちじつのちょう)|わずかな優位を意味する言葉。『論語』先進篇、孔子が弟子に志を問う場面に由来
- 遺簪墜屨(いしんついく)|孔子が簪を失って悲しむ婦人に出会った話と、楚の昭王が落とした靴を惜しんだ故事に由来し、使い慣れた物への愛着を表す言葉
遠水近火(えんすいきんか)|『韓非子』に見える魯の穆公の故事。遠くの助けよりも目前の問題への対処が必要であることを説く教訓- 遠交近攻(えんこうきんこう)|范雎が秦の昭王に献じた外交戦略。遠方の国とは協調関係を結び、近隣の国を一つずつ攻略して勢力を拡大する考え方。長期的な国家戦略によって勢力を拡大した故事
遠慮近憂の類義語・対義語は
類義語
将来への備えや先見性の重要性を示す四字熟語
| 語句(かな) | 意味 |
|---|---|
| 居安思危(きょあんしき) | 平穏な時こそ危機に備えること |
| 深謀遠慮(しんぼうえんりょ) | 遠い将来まで見通して計画すること |
| 先憂後楽(せんゆうこうらく) | 先に苦労し後に楽しむこと |
| 備えあれば憂いなし | 事前準備の大切さを示す言葉 |
対義語
目先の利益や現在だけに目を向ける姿勢を表す語
| 語句(かな) | 意味 |
|---|---|
| 刹那主義(せつなしゅぎ) | 将来を考えず現在のみを重視する考え方 |
| 苟且偸安(こうしょとうあん) | その場しのぎで安逸をむさぼること |
| 行き当たりばったり | 計画性なくその場で判断すること |
遠慮近憂を英語で表記すると
| 英語表現 | 意味 |
|---|---|
| If a man has no foresight, he will have immediate worries. | 先見性がなければ近い将来に憂いが生じる |
| Look ahead and prepare for the future. | 将来を見据えて備えよ |
遠慮近憂に学ぶ|将来を見据える者が憂いを避ける
遠慮近憂は、『論語』に記された孔子の「人無遠慮、必有近憂」に由来する四字熟語です。遠い将来を見据えた備えがなければ、近いうちに憂いや困難が訪れるという教えを表しています。
孔子が生きた春秋時代は、先を見通せない為政者が国を乱し、多くの争いが繰り返された時代でした。そのような時代だからこそ孔子は、目先の利益ではなく、その先にある結果まで考えることの重要性を説いたのです。
現代においても、仕事、経営、資産形成、防災、人材育成など、長期的な視野が求められる場面は少なくありません。未来の問題は突然現れるのではなく、備えを怠った結果として姿を現すことも多いものです。
遠慮近憂は、将来への備えこそが現在の安心につながることを教えてくれる、時代を超えて受け継がれる孔子の知恵なのです。
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