烏白馬角とは?秦の始皇帝と燕の太子丹の伝説に由来する不可能のたとえを解説

おもしろ四字熟語
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烏白馬角(うはくばかく)とは、絶対に起こりえないことや、到底実現不可能なことを意味する四字熟語です。出典は『論衡(ろんこう)』感虚(かんきょ)篇です。秦に人質とされた燕の太子丹と秦王政(後の始皇帝)にまつわる伝説が語源となっています。

「烏が白くなり、馬に角が生える」という現実には起こりえない現象を条件として示したことから、不可能の代名詞として後世に伝わりました。

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烏が白くなり馬に角が生える――烏白馬角の意味とは

烏白馬角(うはくばかく)とは、絶対にありえないこと、実現不可能なことを意味します。

「烏白」は烏の頭が白くなること、「馬角」は馬に角が生えることを表します。どちらも自然界では起こりえない現象であるため、不可能な条件や実現不能な願望のたとえとして使われます。

また、非常に困難な状況が奇跡的に解決することを皮肉的に表現する場合にも用いられます。

「馬角烏白」ともいいます。

烏白馬角|到底実現できないことを表す使い方と例文

実現可能性が極めて低い計画や条件を表現する際に用いられます。

  • 今の予算でその計画を完成させるのは、まさに烏白馬角だ。
  • 証拠もなく無罪を証明するなど烏白馬角に等しい。
  • 彼の要求は烏白馬角と言うべき無理難題だった。
  • 誰も成功しないと言われた挑戦を成し遂げ、烏白馬角を現実にした。

烏白馬角の由来|始皇帝が示した燕の太子丹の帰国の条件

出典は『論衡(ろんこう)』感虚(かんきょ)篇です。戦国時代末期、燕の太子丹は秦へ人質となっていました。しかし、秦王政(後の始皇帝)との関係は次第に悪化し、燕への帰国を望むようになります(元は趙の都・邯鄲(かんたん)で幼少期を共に過ごした間柄であったが、政はかつての友である丹を手厚く扱わず、冷遇しました。)。

ところが秦王は太子丹を帰そうとせず、到底実現できない条件を示したと伝えられています。それが「太陽が一日に二度天頂へ昇り、天から粟が降り、烏の頭が白くなり、馬に角が生え、門の木像に肉の足が生えたなら帰国を許す」というものでした。

後世の伝説では、太子丹の悲嘆が天に通じたため、これらの奇跡がすべて実現し、秦王は約束どおり帰国を許したと語られています。しかし『論衡』の著者である王充(おうじゅう)は、この話を史実として記したのではありません。『感虚篇』では、当時広く信じられていた怪異や奇跡譚を取り上げ、その不合理さを論じています。

つまり、この故事は本来「奇跡が起きた話」ではなく、「絶対に起こりえないことの例」として引用されたものなのです。

原文:
傳書言
燕太子丹朝於秦 不得去
從秦王求歸
秦王執留之 與之誓曰
「使日再中 天雨粟 令烏白頭 馬生角 廚門木象生肉足 乃得歸」
當此之時 天地祐之 日為再中 天雨粟 烏白頭 馬生角 廚門木象生肉足
秦王以為聖 乃歸之

書き下し文:
傳書でんしょに言う。
燕太子丹、秦にちょうし去るを得ず。
秦王にいてかえらんことをもとむ。
秦王これを執留しゅうりゅうし、これと誓いて曰く、
「日再びちゅうにし、天より粟をらせ、烏頭を白くし、馬角を生じ廚門ちゅうもんの木象肉足を生ずるに及びて、すなわち歸ることを得ん」と。
の時にたり、天地これたすけ、日は再び中し、天より粟を雨らし、烏頭を白くし、馬角を生じ、廚門の木象肉足を生ず。
秦王以て聖と為し、乃ち之を歸す。

訳文:
古い書物には次のように記されている。
燕の太子丹は秦へ赴いたが、帰国することができなかった。
そこで秦王に帰国を願い出た。
しかし秦王は太子丹を引き留めて言った。
「太陽が一日に二度天頂に昇り、天から粟が降り、烏の頭が白くなり、馬に角が生え、門の木像に肉の足が生えたなら帰国を許そう」と。
すると天地が太子丹を助け、これらの異変がすべて起こった。
秦王はこれを神聖な力によるものと考え、ついに太子丹を帰国させたという。

この一節のすぐ後ろで、著者である王充は「これは真っ赤な嘘(虚妄)である」と猛烈に批判しています。

「烏白馬角」は、この詩の「烏白頭 馬生角」から生まれた言葉で「絶対に起こりえないこと」「到底実現できないこと」のたとえとして用いられてきました。

現代でも、不可能な条件や実現性のない要求を表現する際に用いられています。

春秋戦国時代の人物と運命をめぐる関連故事

  • 肝脳塗地(かんのうとち)燕の太子丹と刺客・荊軻の故事に基く。大義のために命を賭す忠誠と覚悟を、極めて激しい表現で伝える言葉
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  • 倚門之望(いもんのぼう)|戦乱の中で帰宅の遅い息子(王孫賈)を門に寄りかかって待つ母が、主君の危難をしりながら、自分だけ家に帰ってきた息子の不忠と覚悟のなさを激しく叱責した言葉
  • 飲至策勲(いんしさくくん)魯の桓公が戦勝後に宗廟へ報告し功績を記録した故事。祖先への報告と論功行賞という礼制を描く
  • 允文允武(いんぶんいんぶ)魯の僖公を称えた『詩経』の名句。文徳と武功を兼ね備えた理想的な君主像を表す故事成語
  • 衣履弊穿(いりへいせん)荘子は魏の恵王に「身なりが粗末であることは、生活の貧しさを示すにすぎない。道徳を持ちながら実行できない状態こそが、本当の疲弊である」と説いた
  • 飲河満腹(いんがまんぷく)荘子の寓話に由来し、帝堯が許由に天下を譲ろうとするが、許由は「モグラがいくら豊富な水があろうとも、腹いっぱいになればそれだけで十分である」と分相応で満足すべきで、私には過ぎたる話であると断った

烏白馬角の類義語・対義語

類義語

実現不可能なこと、あり得ないことを表現する言葉として用いられる。

語句(かな) 意味
兎角亀毛(とかくきもう) ウサギに角が生え、カメに毛が生えること
羝乳(にゅうてい) 雄の羊が乳を出すこと

対義語

実現可能性や現実性を表す語として対照的に用いられる。

語句(かな) 意味
有言実行(ゆうげんじっこう) 言ったことを実際に行うこと
必然(ひつぜん) 必ずそうなること
当然(とうぜん) そうなるのが当たり前でなること

烏白馬角を英語で表現すると

不可能な条件やありえない出来事を示す表現として理解される

英語表現 意味
When crows turn white and horses grow horns 絶対にありえないこと
An impossible condition 実現不能な条件

不可能の象徴として語り継がれる烏白馬角

烏白馬角は、烏が白くなり馬に角が生えるという不可能な現象から生まれた四字熟語です。『論衡』感虚篇では、秦の始皇帝と燕の太子丹の伝説が紹介され、王充はその怪異譚を批判的に論じています。

現代でも、実現不可能な条件や到底起こりえない出来事を表現する言葉として広く用いられています。

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