
允文允武(いんぶんいんぶ)とは、文徳と武功の両方を兼ね備えていることを意味する四字熟語です。
出典は『詩経』魯頌(ろしょう)・泮水(はんすい)です。春秋時代の魯の君主である僖公(きこう)を称賛する詩の中で用いられた言葉であり、優れた政治能力と軍事的才能を兼ね備えた理想的な君主像を表しています。
古代中国では、学問や礼を重んじる「文」と、国を守る力である「武」の双方を備えることが理想とされました。その価値観を象徴する名句として、現在まで広く知られています。
魯の名君を称えた「允文允武」の意味とは
允文允武(いんぶんいんぶ)とは、文武とも秀でて優れていることを意味します。
「允」は「まことに」「実に」という意味であり、「允文」は真に優れた文徳、「允武」は真に優れた武功を表します。そのため、学識・人格・統率力・実行力を兼ね備えた人物を称賛する言葉として用いられます。
現代では、文武両道の人物や、知性と行動力を兼ね備えた指導者を評価する際にも使われます。
「允文允武」の使い方と例文
学問や人格だけでなく、実践的な成果や統率力も備えている人物を高く評価する場面で使われます。
- 彼は研究者でありながら優れた経営者でもあり、まさに允文允武の人物だ。
- その名将は政治手腕にも優れ、允文允武と称えられた。
- 学業とスポーツの両方で成果を残した彼女は、允文允武を体現している。
- 理想の指導者とは、古人のいう允文允武の資質を持つ者であろう。
「允文允武」の由来|淮夷を服属させた魯の僖公 ――

出典は『詩経』魯頌(ろしょう)・泮水(はんすい)です。『泮水』は魯の僖公(きこう)の功績を称える頌詩(しょうし)であり、泮宮(はんきゅう)の整備や淮夷(わいい)の平定などを讃えています。
僖公は春秋時代の魯を代表する君主の一人であり、国内政治の安定に努めるとともに、周辺勢力との外交や軍事でも成果を挙げました。この詩では、僖公が祖先の遺徳を継承し、礼を重んじながら武功を立てた理想的な君主として描かれています。
原文:
穆穆魯侯 敬明其德
敬慎威儀 維民之則
允文允武 昭假烈祖
靡有不孝 自求伊祜書き下し文:
穆穆たる魯侯、敬みて其の徳を明らかにす。
敬みて威儀を慎む、維れ民の則かな。
允に文に允に武なり。昭らかに烈祖に假る。
不孝あること靡く、自ら伊の祜を求む。訳文:
厳かで立派な魯の君主は、その徳を深く明らかにしている。
礼儀を慎み、人々の模範となっている。
まことに文徳に優れ、まことに武功にも優れている。
祖先の功業を輝かせ、孝行を尽くし、みずから福を招いているのである。
「允文允武」は、この第三句から生まれた言葉です。詩は単に武力による征服を称えるのではなく、徳による統治と軍事的能力の両立を評価しています。
続く「昭假烈祖」は、祖先の功績を輝かせることを意味しており、僖公が先祖の事業を継承した正統な君主であることを強調しています。また『泮水』全体では、泮宮の整備、淮夷の服属、戦功の献上などが描かれており、「允文允武」はその総括として置かれています。
現代でも、知性と行動力、人格と実務能力を兼ね備えた人物を評価する言葉として用いられています。
春秋戦国時代の関連故事
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- 一進一退(いっしんいったい)|管仲が説いた政治・軍事判断に関わる故事。文と武の均衡を重視した思想は、『允文允武』の理想像とも共通
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允文允武の類義語と対義語
類義語
知性と実践力の両立を評価する言葉として用いられる
| 語句(かな) | 意味 |
|---|---|
| 文武両道(ぶんぶりょうどう) | 学問と武芸の両方に優れること |
| 智勇兼備(ちゆうけんび) | 知恵と勇気を兼ね備えること |
対義語
能力の偏りや徳の欠如を表す語として対照的に用いられる
| 語句(かな) | 意味 |
|---|---|
| 匹夫之勇(ひっぷのゆう) | 思慮を欠いた個人的な勇気 |
| 文弱(ぶんじゃく) | 学問や教養にばかりふけって、体骨や気力が弱々しいこと |
| 粗野(そや) | 武力や荒々しさばかりが目立ち、教養や洗練さに欠けること |
| 武骨(ぶこつ) | 〃 |
允文允武を英語で表現すると
知性と行動力を兼ね備えた人物像を示す表現として理解される
| 英語表現 | 意味 |
|---|---|
| Accomplished in both civil and military virtues | 文徳と武功の両方に優れる |
| A leader of wisdom and strength | 知恵と力を兼ね備えた指導者 |
理想の君主像を伝える允文允武の教え
允文允武は、文徳と武功を兼ね備えた理想的人物を称える四字熟語です。『詩経』魯頌・泮水では、魯の僖公が祖先の事業を継承し、礼と武功によって国を治めた姿が描かれています。
知識だけでも力だけでもなく、その両方を調和させることの大切さを伝える言葉として、現代でも高く評価されています。
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