靡衣婾食|目先の快楽に溺れる生き方を戒める四字熟語

おもしろ四字熟語
記事内に広告が含まれています。
スポンサーリンク

現代社会では、目先の快楽や贅沢に心を奪われ、将来への備えを怠る生き方が問題視されることがあります。そんな生き方を象徴する古代中国の言葉が、今回紹介する「靡衣婾食(びいとうしょく)」です。

韓信という人物の生涯とともに、この語句の深い意味に触れてみましょう。

スポンサーリンク

靡衣婾食の意味とは?

「靡衣婾食(びいとうしょく)」とは、華美な衣服を好み、その場限りの食を貪るような、刹那的で享楽的な生活態度を戒める言葉です。特に、将来の備えや節度を欠き、瞬間的な快楽に溺れて生きることへの批判として用いられます。

  • 靡(び):派手で美しい様子。
  • 婾(とう):その場限り、一時的なこと。かりそめ。
  • 婾食(とうしょく):今日の食事さえあればよいという意から、将来の展望のない生活を意味する。

靡衣婾食の使い方と例文

この語は、華美さや刹那的な生き方を皮肉や戒めの意味で使われます。特に指導者層や人物評において、その精神性や生活態度を批判する文脈で用いられることが多いです。

  • かつての貴族たちは、靡衣婾食の生活に明け暮れ、国の行く末を顧みなかった。
  • 時代の繁栄に酔いしれ、靡衣婾食の風潮が広がっている。
  • 将来の不安も顧みず、彼はまるで靡衣婾食のような生き方をしていた。

語源・由来|『漢書』韓信伝に見る戒めの言葉

「靡衣婾食」は、『漢書』〈韓信伝〉に見られる言葉です。これは韓信自身の言葉ではなく、後世の史家・班固が韓信の生涯を評して記述したもので、功成り名を遂げた後の韓信の奢侈と怠惰を批判的に表現しています。

原文:
人主疑忌有功之臣… 信雖有大功 然靡衣婾食 不念夙夜之憂 而常自怠 卒以誅死

書き下し文:
人主は功ある臣を疑忌す。… 信は大功ありといえども、靡衣婾食し、夙夜(しゅくや)の憂いを念えず、常に自らを怠り、ついに誅殺せらる。

訳文:
君主は功績ある家臣を疑い遠ざける。韓信は大きな功績を立てたが、華美な衣をまとい、刹那的な生活にふけり、国家の苦労を顧みることなく、自らを律することを怠った結果、ついに誅殺された。

ここでの「靡衣婾食」は、韓信が将としての分をわきまえず贅沢に耽った姿を表す言葉であり、まさに自滅の原因となったと記録されています。こうした史実に触れることで、現代にも通じる教訓を得ることができるのです。

韓信にまつわる他の故事成語

韓信はその数奇な生涯を通じて、多くの故事成語を生みました。彼の行動や信念に由来する言葉は、現代にも通じる深い教訓を与えてくれます。

靡衣婾食の類義語・対義語

類義語

語句 意味
無為徒食(むいとしょく) 働かずにただ食べて生きること。
酔生夢死(すいせいむし) 何の目的もなく、無為に一生を過ごすこと。

対義語

語句 意味
精励恪勤(せいれいかっきん) 真面目に誠実に仕事に励むこと。
勤倹力行(きんけんりっこう) 勤勉で倹約に努め、実行に移すこと。
奮励努力(ふんれいどりょく) 全力で物事に取り組み、努力すること。

靡衣婾食の英語表記とその意味

英語表記 意味
Indulgence in luxury and food 贅沢な衣食にふけること
Living for the moment 刹那的な生き方をすること

華美と刹那に溺れた韓信の教訓から学ぶ

「靡衣婾食」は単なる贅沢を非難するだけの言葉ではありません。過去の栄光に胡坐をかき、規律を失った韓信の姿が、この語の背景には刻まれています。

成功の後こそ、慎みと節制が求められるという歴史の教訓は、現代を生きる私たちにも深い示唆を与えてくれます。表面的な意味にとどまらず、人物の生き様にまで踏み込んで理解することで、この言葉はより鮮やかに心に刻まれるでしょう。

コメント

タイトルとURLをコピーしました