時代を駆け抜けた才人たち──『史記』に学ぶ「高材疾足」の真意

おもしろ四字熟語
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歴史が動く時、常にその中心には異才と行動力を兼ね備えた人物が存在します。古代中国の戦乱の世にも、才知に富み、すばやく時代の波を捉えた者たちがいました。彼らを的確に表す言葉、それが『高材疾足(こうざいしっそく)』です。

今回はこの言葉の意味と由来をひも解き、現代に通じる人物観を探っていきます。

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高材疾足の意味とは?

高材疾足(こうざいしっそく)とは、優れた才能を持ち、行動も素早い人物を指す四字熟語です。

  • 「高材」は秀でた才知、
  • 「疾足」は俊敏な行動力

を意味します。この語は、頭脳明晰なだけでなく、実際の行動にも裏打ちされた人物を賞賛する言葉として使われます。

「高材疾足」の使い方と具体例

「高材疾足」は、リーダーや先見の明を持つ人材、または歴史上の英傑など、知と行動の双方に優れた人物を表す際に使われます。現代でもビジネスや教育、政治の分野で通用する評価語です。

  • 若くして事業を立ち上げた彼は、高材疾足の若者として注目を集めた。
  • 組織の変革を一手に担ったあの上司は、まさに高材疾足の人物だった。
  • 高材疾足なリーダーがいると、現場の判断と行動が圧倒的に早くなる。

語源・由来|『史記』淮陰侯列伝 冒頭より

「高材疾足」は、中国前漢時代の歴史書『史記』巻九十二「淮陰侯列伝」(韓信伝)の冒頭に登場する表現です。

ここでは、秦の崩壊後、戦国のように群雄が割拠し、才知と行動力を備えた者たちが権力の座を争った様子が語られています。

原文:
秦之綱絶而維弛 山東大擾 異姓并起 英俊烏集
秦失其鹿 天下共逐之 於是高材疾足者先得焉

書き下し文:
秦の綱(こう)絶えて維(い)弛(ゆる)み、山東大いに擾(みだ)れ、異姓并(なら)び起ち、英俊烏(う)のごとく集まる。秦、その鹿(しか)を失ふや、天下共にこれを逐(お)ふ。ここに於いて高材疾足の者、まずこれを得たり。

訳文:
秦の秩序は崩れ、山東地方は大混乱に陥った。異姓の豪族たちが次々と立ち上がり、優れた人物が群れ集まった。秦が覇権を失うと、天下の人々がその後継を争い、そして才能と行動力を兼ね備えた者が、いち早くそれを手に入れたのだった。

ここに登場する「高材疾足」は、時代の変化に素早く対応できた者たちを象徴する言葉です。特定の一人ではなく、韓信を含む多くの英才たちの行動力を描写しています。

一方で、この物語の流れの中で、後に漢の名将となる韓信も、まさにこの言葉を体現する存在として物語に登場していきます。

韓信に関するその他の四字熟語

「高材疾足」は韓信の才知と行動力を象徴する言葉ですが、彼の波乱に満ちた生涯を物語る四字熟語は他にも数多く残されています。以下に、韓信に関連する故事成語をいくつかご紹介します。

  • 雲合霧集(うんごうむしゅう)|韓信が軍を起こした際、兵が雲や霧のように集結した様子を表し、カリスマ性と求心力の強さを示しています。
  • 国士無双(こくしむそう)|張良が韓信を「一国に二人といない人材」と評した故事に由来し、韓信の卓越した能力と希少性を伝える言葉です。
  • 韓信匍匐(かんしんほふく)|貧しい青年時代の韓信が屈辱を忍び、人の股をくぐることで将来に備えた逸話に基づき、耐える者こそ大成することを教えています。
  • 躡足附耳(じょうそくふじ)|韓信の功績が劉邦の猜疑を招いた際、張良と陳平が怒りによる決裂を恐れ、足音を忍ばせて耳元で忠告した場面に由来します。
  • 狡兎良狗(こうとりょうく)|役目を終えた功臣が排除されるという非情を描いた語で、最終的に粛清された韓信の末路に重ねられています。

高材疾足の類義語・対義語

類義語

語句 意味
高材逸足(こうざいいっそく) 優れた才能とすぐれた行動力を兼ね備えた人物。高材疾足と近い意味を持つ
知勇兼備(ちゆうけんび) 知恵と勇気をあわせ持つ人物
英俊傑出(えいしゅんけっしゅつ) 抜きん出た才知ある人物

対義語

語句 意味
無能無策(むのうむさく) 能力もなく、計略もないこと
遅疑逡巡(ちぎしゅんじゅん) 判断に迷って決断できず、ぐずぐずしているさま

時代をつかむには──知と行動の両輪「高材疾足」の教え

「高材疾足」は、才知だけでなく行動力も求められる人物像を描いた言葉です。
現代でも、変化の早い社会において、考えるだけでなく、すばやく動ける人材こそが求められています。

『史記』はその冒頭で、乱世を駆け抜けた英雄たちの中に「高材疾足」の者が真っ先に頭角を現したと記します。
この言葉は今も、ビジネスや教育、政治などさまざまな分野で生きる指針となるでしょう。

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