
三国志の時代、諸葛亮(孔明)は生涯をかけて蜀のために尽力しました。
鞠躬尽瘁(きっきゅうじんすい)は、そんな彼の精神を表した言葉であり、今もなお高潔な生き方の象徴として語り継がれています。
鞠躬尽瘁の意味
「鞠躬尽瘁(きっきゅうじんすい)」とは、ひたすら心を尽くして骨を折り、国や主君のために誠心誠意努めることを意味します。
個人の私利私欲を超えた献身的な姿勢を表します。
鞠躬尽瘁の語源・由来|諸葛亮の覚悟と忠誠
これは、第2回北伐(228年)に先立ち、蜀の皇帝・劉禅に提出された文書で、魏への遠征に向かう際の決意と忠誠が込められています。
その中にある有名な一節が、まさにこの四字熟語の由来です。
原文:
臣鞠躬尽瘁 死而後已書き下し文:
臣(しん)は鞠躬(きっきゅう)して尽瘁(じんすい)し、死して後(のち)やむ。訳文:
私は身をかがめ、心の限りを尽くして国事に励み、命尽きるその時までその責任を果たす所存です。
「鞠躬」とは慎み深く身をかがめて仕えること、「尽瘁」とは心を尽くし、骨身を惜しまぬ努力を意味します。合わせて、徹底した忠義と奉仕の精神を表す言葉として、後世まで語り継がれています。
この時代、蜀は魏に対して劣勢でありながら、漢王朝復興という理想を掲げて戦い続けていました。諸葛亮は、その理想を胸に、先帝・劉備の遺志を継いで、国家のために命を賭けて北伐に臨んだのです。
この表現には、忠義を尽くすことに一切の妥協を許さぬ、政治家としての信念が凝縮されています。
鞠躬尽瘁の使い方と例文
主に、政治家・公務員・教育者など、社会や他者のために献身する人物に対して使われる表現です。個人の私情を捨てて公に尽くす姿勢を称える際に用いられます。
- 諸葛亮は、まさに鞠躬尽瘁の精神で蜀を支えた名宰相である。
- 彼は市民のために鞠躬尽瘁し、地域に多大な貢献を残した。
- 現代にも、鞠躬尽瘁の思いで国を支える政治家が必要だ。
諸葛亮に関連する四字熟語
諸葛亮は、三国志に登場する蜀の名軍師であり、知略と誠実さをもって国家の再興に尽力しました。彼にまつわる数々の逸話から、多くの四字熟語が生まれています。
- 水魚之交:劉備と諸葛亮の、切っても切れない深い信頼関係を表す
三顧之礼:劉備が諸葛亮を三度訪ね、礼を尽くして迎え入れた故事- 臥竜鳳雛(がりょうほうすう):世に知られぬ傑出した人物を指し、諸葛亮と龐統を例えた言葉
- 七縦七擒(しちしょうしちきん):諸葛亮が南蛮王・孟獲を七度捕えて七度許した話に基づく
泣斬馬謖(きゅうざんばしょく):諸葛亮が愛弟子・馬謖を涙ながらに斬った非情な決断を伝える- 危急存亡:諸葛亮が国家や組織の命運を左右する重大な局面を指して使った言葉
- 性行淑均(せいこうしゅくきん):諸葛亮が説いた、徳を備え心と行動が調和する人間像を表す言葉
群疑満腹(ぐんぎまんぷく):諸葛亮が、信義をもって人を懐柔しなければ疑念が蔓延し、事が成し難くなると訴えた言葉- 竜驤虎視(りょうじょうこし):諸葛亮の壮志を示す語で、竜のように躍進し、虎のように睨みをきかせて天下を睥睨する様子を表す
- 車載斗量(しゃさいとりょう):諸葛亮が呉の皇帝・孫権に、江東には優れた人材が豊富であるとたたえた言葉
鞠躬尽瘁の類義語・対義語
類義語
| 語句 | 意味 |
|---|---|
| 尽忠報国(じんちゅうほうこく) | 忠義を尽くして国に報いること |
| 粉骨砕身(ふんこつさいしん) | 骨を砕くほど全力を尽くすこと |
| 忠臣義士(ちゅうしんぎし) | 忠義に厚く義に生きる人物 |
対義語
| 語句 | 意味 |
|---|---|
| 利己主義(りこしゅぎ) | 自分の利益だけを追い求める考え方 |
| 傍観者(ぼうかんしゃ) | 物事に積極的に関わらず、ただ見ているだけの人 |
鞠躬尽瘁の英語表記と意味
| 英語表記 | 意味 |
|---|---|
| devote oneself heart and soul | 心身を尽くして献身する |
鞠躬尽瘁の意味・由来・使い方まとめ
「鞠躬尽瘁」は、三国志の名宰相・諸葛亮が示した、忠義と献身の精神を象徴する言葉です。現代においても、公のために身を捧げる人々への最大級の賛辞として用いられています。
その意味や使い方を正しく理解し、感謝と尊敬を込めて使いたい四字熟語のひとつです。
原文:
コメント