
私たちの社会には、切っても切れない関係があります。国家間の同盟関係、企業と地域社会、あるいはチームメンバーとの信頼関係など、お互いに支え合いながら成り立っているものは少なくありません。
そんな「一方が損なわれれば、もう一方も立ち行かなくなる」ような関係性を、古代中国の故事に基づいて表現した四字熟語が「唇歯輔車(しんしほしゃ)」です。
この記事では、唇歯輔車の意味や由来、ビジネスや日常生活での使い方をわかりやすく解説します。組織や人間関係の在り方を見直すヒントとして、ぜひ最後までご覧ください。
- 「唇」は「脣」(旧字)とも書きますが、現代日本語では常用漢字の「唇」が一般的に使われます。
唇歯輔車とは?意味と使い方をわかりやすく解説
唇歯輔車(しんしほしゃ)とは、互いに非常に密接に関係し合っており、どちらかが損なわれれば、もう一方も成り立たなくなるほどの深い相互依存関係を意味する四字熟語です。
その関係性は「運命共同体」ともいえるほどで、国家間の同盟や、企業と地域社会、プロジェクトチームやパートナーシップなど、一方の崩壊が直ちに他方の危機につながるような緊密なつながりを表します。
唇歯輔車の語源・由来:『左氏伝』に見る“唇亡びて歯寒し”の故事
「唇歯輔車」の語源は、中国春秋時代の歴史書『春秋左氏伝』の僖公五年に記された故事に由来します。
晋(しん)の国が西方の小国・虢(かく)を攻めようとした際、虞(ぐ)の国が晋軍の通過を許可します。しかし虢は虞と互いに助け合う関係にあり、虢が滅んだ後、虞もまた晋に滅ぼされてしまいました。
このとき、ある賢人が「唇亡びて歯寒し(しんほろびて はさむし)」という言葉で、虞に警告していたとされます。唇がなければ歯は冷えてしまうように、密接な関係にある国が一方失われれば、もう一方も危うくなるというたとえです。
後にこの「唇亡歯寒」のたとえと、同じく密接な依存関係を表す「輔車相依(車輪と車軸が互いに支え合う)」という成語が組み合わされてできたのが「唇歯輔車」あるいは「輔車唇歯」という四字熟語です。
唇歯輔車の使い方・例文
- 両国は唇歯輔車の関係にあり、一方の混乱はもう一方の安全保障にも影響する。
- 中小企業と地域社会は唇歯輔車のような関係だ。
- 私たちのプロジェクトチームは、誰か一人が抜けても影響が大きい唇歯輔車の関係だ。
唇歯輔車の類義語・対義語
類義語
| 四字熟語 | 意味 |
|---|---|
| 唇亡歯寒(しんぼうしかん) | 密接な関係にあるものの一方が失われると、他方も損なわれるというたとえ。 |
| 輔車相依(ほしゃそうい) | 車の構造のように、互いに支え合って存在する密接な関係のこと。 |
| 一蓮托生 | 運命を共にする、良くも悪くも一緒である関係。 |
対義語
| 四字熟語 | 意味 |
|---|---|
| 独立独歩 | 他に頼らず、自分の信念や力で行動すること。 |
| 自給自足 | 他からの援助を受けず、自分の力で必要なものを得ること。 |
唇歯輔車の英語表記と意味
| 英語表記 | 意味 |
|---|---|
| Mutual dependence | 互いに密接に依存している関係 |
| Interdependent relationship | 相互に依存し合う関係 |
まとめ:唇歯輔車は“運命共同体”の象徴
唇歯輔車(または輔車唇歯)は、単なる協力関係ではなく、「どちらかが失われればもう片方も危うくなる」という運命共同体のような深いつながりを表す言葉です。現代においては、国家間の同盟関係、企業と地域社会、あるいはプロジェクトチームなど、さまざまなシーンでこの四字熟語は活用されています。
ビジネスや国際関係だけでなく、身近な人間関係にも応用できる言葉として、ぜひ覚えておきたい四字熟語です。
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